研究概要 |
平成10年度より引き続き、アドレノメデュリン(AM)のring,C-terminal,およびその中間(25〜36)のアミノ酸配列を認識する単クローン抗体を新規に作製し、ヒト全身の正常組織におけるAMの分布を再検討したAMは内分泌系組織のみならず、心臓、血管、腎に存在し、消化器・呼吸器・生殖器も粘膜上皮とともに皮膚にも分布することを新たに見いだした(Histochem.Cell Biol.,112:185-191,1999)。上記の分布により、生体防御系への関与が推察されたため、AMおよびPAMPの抗菌作用を検討した。AM/PAMPともこれまで知られていた抗菌作用を有するペプチドであるDefensin familyよりも強い抗菌作用を有していた(投稿中)。現在、種々の病態(循環障害、炎症、腫瘍など)、特に動脈硬化病変(大動脈、冠状動脈)における組織・細胞内でのAMの発現・局在を、病理組織標本(剖検症例・生検・手術標本)、各種の疾病動物モデルおよび培養細胞を用いて検討中である。 これまで報告されているAMと各種病態、特に循環器疾患(心不全、末梢循環障害、高血圧等)との関連から、ヒト培養内皮細胞およびヒト培養血管平滑筋細胞におけるAMの作用を検討した。まず、これまで増殖促進・増殖抑制と相反する報告されている培養血管平滑筋において、その増殖に対するAM/PAMPの作用を検討したが、促進・抑制とも有意な差は見出せなかった。一方、内皮細胞においては、無血清培養に伴うapoptosis誘導をAMは濃度依存性に抑制した。また、血液凝固の開始因子である組織因子(TF)のapoptosisに伴う発現を濃度依存性・時間依存性に抑制し、培養上清中への外因系凝固経路阻害因子(TFPI)の分泌を同様に増強した。これらの作用は、AMの受容体拮抗ペプチド、AMに対する特異抗体およびcAMPやMAPK阻害薬の共存にて阻害され、AMの新しい特異的作用の存在が示唆され、AMのヒトの凝固系への関与を示した初めての知見である(投稿中)。また、このTF/TFPIに対するAMの作用を各種培養内皮細胞において検討した結果、培養内皮細胞の起源(場所)によって作用の程度や態度が異なることを見い出した(投稿中)。現在、これら凝固系因子に加えて、各種血小板凝集への作用や線溶系因子の発現に対する作用を検討中である。
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