研究概要 |
1)アドレノメデュリン(AM)のヒト生体内局在、特に病的状態における検討 病的状態、特に、正常血管と動脈硬化巣におけるAMの発現の変化を、病理解剖例冠状動脈、胸部大動脈および冠状動脈硬化巣切除(DCA)によって得られたサンプルにおいて、免疫組織学的に検討した。正常組織において、すべての脈管(動脈・静脈・リンパ管)の中膜平滑筋細胞に陽性を示した。動脈硬化巣においては、その初期病変であるびまん性内膜肥厚および脂肪斑周囲の平滑筋細胞には陽性を示し、脂肪斑の泡沫細胞は陰性であった。一方、進行病変である線維脂肪病変および粥腫の泡沫細胞は、病変の進行につれ陽性率・陽性強度の上昇がみられ、逆に中膜平滑筋細胞の陽性率は減少した。特に、粥腫破綻の好発部位である粥腫肩部の泡沫細胞の多くが陽性を示した。さらにDCAサンプルにおけるAM発現は、安定狭心症患者に比して不安定狭心症患者で有意に高値であった。これらの結果より、AMの粥腫破綻・心筋梗塞発生への関与が示唆された(3rd Int.Symp.on AM/PAMP,2002)。また、中耳蝸牛の血管床にAMの発現が認められ、蝸牛の機能調節に関与することが示唆された(J Otorhinolaryngol Relat Spec,2002)。 2)AMの新しい生理活性の検討 培養血管内皮細胞におけるAMの影響について検討し、AMが外因系血液凝固の開始因子である組織因子の発現を抑制し、その抑制因子である外因系血液凝固インヒビターの発現を促進することを見出した。さらにAMがPAI-1の発現を抑制、uPAの発現を亢進させ、抗血栓作用を有することをあきらかにした(Cardiovasc Res,2003)。 ラット心筋梗塞モデルにおいて、AMの心室リモデリングへの関与を検討し、AMが心筋梗塞範囲の縮小、心室リモデリング抑制、心室機能の低下抑制など、心筋保護作用があることをあきらかにした(Cardiovasc Res,2002)
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