研究概要 |
アドレノメデュリン(AM)は副腎のみならず腎臓や血管壁においても産生され、これらの組織病変の進行に影響を与えることが推測される。培養血管内皮細胞にヒトAM遺伝子プロモーター領域を組み込んだルシフェラーゼ・ベクターを導入し、その発現活性を検討した所、AM遺伝子の発現にはTATA boxやAP-2に加えNF-IL6が転写調節因子として関与することが示された。様々な生理的,病的な状態におけるAMの挙動を観察すると、血中AM濃度は感染症や外科手術などの侵襲により著明に上昇することが観察された。培養細胞における実験でAMの産生はインターロイキン-1(IL-1)や腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインの刺激により著明に増加することを考慮すると、炎症や外傷により産生されたサイトカインがNF-IL6を介しAM遺伝子の発現を刺激する機序が考えられる。一方、IL-1やTNFなどのサイトカインは各種の細胞においてアポトーシスを誘導することが知られており、腎硬化症や腎炎などの腎疾患における腎組織の病像は炎症性のサイトカインや細胞の増殖およびアポトーシスによる欠落により修飾される。高血圧自然発症ラットのNO産生を抑制することにより著明な腎硬化症モデルを作成し、腎組織像を検討すると、血管内皮細胞,平滑筋細胞に加え糸球体細胞や尿細管上皮細胞にもTUNEL法にて染色されるアポトーシス細胞が観察された。アポトーシスを誘導するIL-1やTNFが一方ではAMの遺伝子発現,産生を強力に刺激することを考慮すると、様々な腎疾患において腎組織で産生されるAMは炎症や細胞アポトーシスの発現と関係し、腎組織病変の進行を修飾する因子の一つである可能性が推測される。
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