研究概要 |
ヒト・アドレノメデュリン(AM)遺伝子は第11染色体短腕遠位部に位置し、その4kb3′下流には(CA)nのマイクロサテライト配列が存在する。日本人におけるCAリピート数は11,13,14および19の4種類であり、健常人300名(男219,女81;56±1才)における各アレルの頻度は11:28.8%,13:33.5%,14:34.7%,19:3.0%であった。このCAリピート数の違いによる遺伝子多型と様々な循環器疾患の素因や病態との関係を検討した結果、本態性高血圧患者や糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者においては19リピートのアレル頻度が高いことを見い出した。そして、心血管疾患発症のリスクが高い透析患者534例を2年間追跡調査し、遺伝子多型と生命予後や心血管疾患発症との関係を検討した。2年間で心血管疾患を発症した132例のCAリピート数は11:30.9%,13:33.0%,14:32.6%,19:3.5%で非発症例(11:27.8%,13:31.7%,14:35.2%,19:5.3%)と有意な違いはなかったが、ACE遺伝子多型のDアレルの頻度は発症例で非発症例よりも多かった(48.1%vs34.8%,p<0.001)。生命予後に関しては、AM遺伝子近傍マイクロサテライト多型およびACE遺伝子型により有意な違いはなかった。 SHRにL-NAMEを慢性投与しNO産生を抑制すると著明な高血圧性血管病変とともに腎障害や心筋梗塞を発症する。これに伴い、組織学的には心筋間質や糸球体,尿細管細胞にアポトーシスの発現が観察された。高血圧動物においては、糸球体硬化が起こる以前の段階において、アポトーシス誘導と増殖抑制により糸球体細胞数が減少し係蹄面積が縮小した。このように高血圧性の障害に対する循環器系組織のリモデリングは、細胞レベルではアポトーシス発現と細胞増殖反応のバランスにより制御されていると考えられた。免疫染色にてAMは心筋間質血管周囲の線維芽細胞や腎臓においては萎縮尿細管上皮,硬化糸球体そして糸球体・血管周囲の線維芽細胞などに認められ、障害組織のリモデリングに関与していることが推測された。
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