研究概要 |
ヒト・アドレノメデュリン(AM)遺伝子の3'下流には(CA)nのマイクロサテライト配列が存在し、日本人におけるCAリピート数は11,13,14および19の4種類であった。前年度までに、このうち19リピートのアリルの存在が本態性高血圧や糖尿病性腎症の遺伝的素因と関係することを見い出した。さらに、心血管疾患発症のリスクが高い透析患者534例を3年間追跡調査し、遺伝子多型と心血管疾患発症との関係を検討した。3年間で155例が心血管疾患を発症し、発症例では非発症例よりACE遺伝子多型のDアリルの頻度が高かった(45.2%vs35.2%, p<0.001)が、AM遺伝子近傍のCAリピート数の分布には有意な違いはなかった。生命予後に関しては、AM遺伝子近傍マイクロサテライト多型およびACE遺伝子型により有意な関係は認められなかった。また、直接シーケンス法によりヒトAMゲノムDNAを検索した結果、新たに第1および第3イントロンに1塩基置換の遺伝子多型(SNP)が存在することを見い出した。 心血管系の組織におけるAM産生動態を検討するため、ヒトおよびラットにおいてリアルタイムPCRによるAM遺伝子発現のアッセイ系を確立した。これにより、数mgの生検組織においてもAMmRNAの定量的評価が可能である。SHRにL-NAMEを慢性投与しNO産生を抑制すると著明な高血圧性血管病変とともに腎障害や心筋梗塞を発症する。組織学的には間質の線維化や糸球体,尿細管や線維芽細胞にアポトーシスの発現が観察される。これらの心および腎組織ではTGF-β, caspase-3とともにAMのmRNA発現が増加しており、線維化による臓器障害やアポトーシス誘導による組織リモデリングの過程にAMが代償的な役割をもつことが推測された。また、Dalh-Sラットは食塩感受性高血圧とともに最終的には心不全を発症する実験モデル動物であるが、その心組織においてもNO合成酵素ともにAMの発現が増加しており、AII受容体拮抗薬治療により改善することを観察した。
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