研究概要 |
多数例でAM遺伝子とその隣接領域のゲノムDNAの塩基配列を検索し、約4kb 3'下流に(CA)nのマイクロサテライト多型を認めた。このCAリピート数は日本人においては11,13,14および19の4種類であり、健常人に比べ、本態性高血圧や糖尿病性腎症においては19回繰り返しのアリルの出現頻度が高く、このマイクロサテライト多型が高血圧の遺伝的素因や糖尿病における腎障害の進展と関係すると思われた。また、第1および第3イントロンには+223A/Cおよび+1100C/Gの互いに連鎖する2つの単塩基変異(SNP)が認められた。健常人における+223Cのアリルは3.7%と低頻度であったが、血清トリグリセリド高値など脂質代謝と関係する可能性が推測された。 重症高血圧を呈するL-NAME投与SHRの心筋間質や糸球体,尿細管細胞にアポトーシスの発現が観察された。高血圧性糸球体硬化の初期段階においてはアポトーシス誘導と増殖抑制により糸球体細胞数が減少し係蹄面積が縮小した。このように高血圧性の障害に対する循環器系組織のリモデリングは、細胞レベルではアポトーシス発現と細胞増殖のバランスにより制御されていると考えられた。免疫染色にてAMは心筋間質血管周囲の線維芽細胞、腎臓では萎縮尿細管上皮,硬化糸球体および糸球体・血管周囲の線維芽細胞などに認められ、障害組織のリモデリングに関与することが推測された。これらの心および腎組織では.TGF-β,caspase-3とともにAMのmRNA発現が増加しており、線維化による臓器障害やアポトーシス誘導による組織リモデリングの過程にAMが代償的な役割をもつと思われた。また、AMの持続投与により食塩感受性高血圧ラットの腎障害が緩和されることを観察した。ヒトの腎生検組織においてもreal-time PCR法によりAMやcaspase-3のmRNAを定量した結果、著明な高血圧性腎障害を示す症例ではAMmRNAの発現が多く、また、IgA、腎症の予後不良群ではcaspase-3のmRNAが多くアポトーシスの発現が促進されていることが観察された。
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