新しい炎症・細胞増殖の調節因子としてのアドレノメデュリンの役割

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10218211
• 研究機関: 国立循環器病センター
• 研究代表者: 南野 直人 国立循環器病センター研究所, 研究機器管理室, 室長 (50124839)
• 研究分担者: 片渕 剛 国立循環器病センター研究所, 研究機器管理室, 室員 (50300976)
• キーワード: アドレノメデュリン / 炎症 / 炎症性サイトカイン / 線維芽細胞 / 血管平滑筋細胞 / CGRP / 受容体活性調節蛋白 / 上皮細胞

研究概要

生命維持に不可欠な循環器系のホメオスタシス維持のため、生体は精密、多重な調節機構を有するが、その全容の解明への道は未だ遠い。原因の一つは、未発見因子による調節・制御機構の存在と評価不能なことに由来する。本研究では、心血管系細胞を標的とした生物活性測定法を開発し、新規心血管作動性ペプチドの発見とその機能解明を目指す。
出発材料は、細胞培養上清からの精製が現状では困難と判断されたため、ブタ脳(20kg)を対象とし、抽出、スクリーニングと精製に供した。生物活性測定法として細胞内cAMP、cGMP濃度、細胞内カルシウム濃度の活性スクリーニング系が使用可能となり、対象培養細胞として各種哺乳類の血管内皮細胞、平滑筋細胞、ラット初代培養心筋細胞と心臓繊維芽細胞、ブタ尿細管上皮細胞、さらに神経系細胞も加えて検討を行った。血管系細胞ではラット平滑筋細胞、内皮細胞が最も反応性が良く、これらを幅広く検討した。昨年度の主要なピークに続き本年度は微小な活性ピークについても検討を行ったが、平滑筋細胞について活性が認められたピークの大部分はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の構造の一部が修飾、酸化あるいは破壊されたペプチドであり、他の部分は血管作動性腸管ペプチド(VIP)の分解あるいは酸化ペプチドであった。
続いて他の細胞でのスクリーニングも行った結果、尿細管上皮細胞やグリア系細胞において高感度の反応物質が認められた。その系統的な分離と同定を行っているが、HPLC上は理論的なペプチドの溶出位置に相当しないものの、大部分はCGRP、VIP、PACAPとその関連ペプチドであることが確認された。しかし、比較的弱いが明確な活性ものも残されており、現在その完全な分離、構造決定を質量分析機も併用して系統的に実施している。

研究成果

• [文献書誌] A.Kubo,N.Minamino, et al.: "Adrenomedullin gene transcription is decreased in peripheral blood mononuclear cells of patients with IgA nephropathy."Nephron. 85. 201-206 (2000)
• [文献書誌] T.Shindo,N.Minamino, et al.: "Hypotension and resistance to lipopolysaccharide-induced shock in transgenic mice overexpressing adrenomedullin in their vasculature."Circulation. 101. 2309-2316 (2000)
• [文献書誌] M.Fujioka,N.Minamino, et al.: "Adrenomedullin in patients with cerebral vasospasm after aneurysmal subarachnoid hemorrhage."Stroke. 31. 3079-3083 (2000)
• [文献書誌] Y.Tomoda,N.Minamino, et al.: "Cardiac fibroblasts are major production and target cells of adrenomedullin in the heart in vitro."Cardiovasc.Res.. 49. 721-730 (2001)
• [文献書誌] Y.Nishitani,N.Minamino, et al.: "Imbalance between interleukin-6 and adrenomedullin mRNA levels in peripheral blood mononuclear cells of patients with lupus nephritis"Clin.Exp.Immunol.. (in press).
• [文献書誌] C.Robertson,N.Minamino, et al.: "Increased adrenomedullin in cerebrospinal fluid after traumatic brain injury in infants and children."J.Neurotrauma. (in press).
• [文献書誌] N.Minamino, et al.: "Clinical Hemorheology and Microcirculation 23"IOC Press. 8 (2001)