アドレノメデュリンの心筋及び血管壁細胞における産生調節とシグナル伝達機構の解明

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10218212
• 研究機関: 国立循環器病センター(研究所)
• 研究代表者: 寒川 賢治 国立循環器病センター研究所, 生化学部, 部長 (00112417)
• 研究分担者: 岡野 一郎 国立循環器病センター研究所, 生化学部, 室員 (30300974) ; 児島 将康 久留米大学, 分子生命科学研究所・遺伝子情報部門, 教授 (20202062)
• キーワード: アドレノメデュリン(AM) / 心筋細胞 / 心筋保護作用 / 虚血心筋再灌流障害 / アポトーシス抑制作 / Aktの活性化 / 心筋梗塞サイズ / 急性冠症候群

研究概要

これまで、アドレノメデュリン(AM)の心血管系に対する様々な作用が報告されているが、AMの心筋保護作用については未だ明らかでない。本研究では、短期間のAM投与の虚血心筋再灌流障害における効果、およびその作用機序について検討した。
ラットを人工呼吸下に開胸、左冠動脈を30分結紮し、結紮を解除する事で心筋虚血再灌流モデルを作製した。左冠動脈結紮後、経静脈的に60分間AM(0.05μg/kg/min)を投与した。AMは、虚血再灌流後の心筋梗塞サイズ(28±4より16±1%、P<0.01)・左室拡張末期圧(19±2より8±2mmHg、P<0.05)・心筋細胞のアポトーシス(9±2より3±1%、P<0.05)を有意に減弱した。さらに心筋収縮力の指標であるdP/dt max(4524±247より5285±285mmHg/s)を増加させ、sham群のそれと有意な差を認めなかった。phophatidylinositol 3-kinase inhibitorであるWortmanninの先行投与は、AMによる虚血再灌流後の心筋保護効果(心筋梗塞サイズ縮小、左室拡張末期圧の低下)をうち消した。正常ラットに対するAMの経静脈投与は、用量依存性に心筋のAktを活性化した。
短期間の経静脈的AM投与は、ラット心筋における虚血再灌流障害を減弱した。この効果の機序に少なくとも一部は、Aktの活性化を介した抗アポトーシス作用が関与している可能性が考えられた。本研究より、急性冠症候群患者に対して、再灌流療法中および術後のAM投与が有効である可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] N.Nagaya, et al.: "Pulmonary vasodilator response to adrenomedullin in patients with pulmonary hypertension"Hypertens.Res.. 26 Suppl. S141-S146 (2003)
• [文献書誌] H.Okumura, et al.: "Adrenomedullin infusion during ischemia/reperfusion attenuates left ventricular remodeling and myocardial fibrosis in rats"Hypertens.Res.. 26 Suppl. S99-S104 (2003)
• [文献書誌] T.Nishikimi, et al.: "Ventricular Adrenomedullin System in the Transition From LVH to Heart Failure in Rats"Hypertension. 41. 512-518 (2003)
• [文献書誌] T.Tokudome, et al.: "Adrenomedullin inhibits doxorubicin-induced cultured rat cardiac myocyte apoptosis via a cAMP-dependent mechanism"Endocrinology. 143. 3515-3521 (2002)
• [文献書誌] N.Nagaya, et al.: "Intravenous adrenomedullin in myocardial function and energy metabolism in patients after myocardial infarction"J.Cardiovasc.Pharmacol.. 39. 754-760 (2002)
• [文献書誌] K.Tambara, et al.: "Increased pericardial fluid concentrations of the mature form of adrenomedullin in patients with cardiac remodelling"Heart. 87. 242-246 (2002)