出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて液胞タンパク質の液胞への輸送経路が複数存在することが明らかにされつつある。これまでに分裂酵母Schizosaccharomyces pombeには複数の液胞へのタンパク質輸送機構が存在するかは全く明らかにされていなかった。我々は分裂酵母の鉄イオンの取り込みに関与する細胞表層局在複数膜貫通タンパク質をコードするpdt1遺伝子を取得し、本タンパク質が分裂酵母内で細胞表層からエンドサイトーシスにより液胞へと輸送されることを見いだした。またアクチン関連遺伝子を破壊した分裂酵母変異株はPdt1タンパクの液胞へのエンドサイトーシスが阻害されていることを見いだした。次に出芽酵母において液胞膜に局在するアルカリホスファターゼ(ALP)と相同性の高い遺伝子を単離し、本タンパク質が分裂酵母においてALP活性を示すこと、動物や出芽酵母で明らかにされているアダプチン(AP-3)複合体を介して液胞へと輸送されていることを明らかにした。さらに分裂酵母において窒素飢餓特異的に発現する遺伝子として取得されていた遺伝子であるisp6遺伝子産物が、分裂酵母の液胞セリンプロテアーゼであることを証明し、その液胞への輸送機構について明らかにした。 以上の結果から分裂酵母にも複数の液胞タンパク質輸送経路が存在することを明らかにすることができた。 植物の液胞は種々の化合物の蓄積・解毒コンパートメントとして知られているが、我々は抗真菌剤であるナイスタチンに強い感受性を示す出芽酵母変異株を取得して解析を行ったところ、液胞形態形成に関与するVPS16遺伝子に変異が生じたものであることがわかった。さらに解析の結果、出芽酵母の液胞はナイスタチンの耐性に深く関与していることがわかり、酵母液胞が各種薬剤の解毒コンパートメントとして機能していることを明らかにした。
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