酵母や植物の液胞は重金属イオンなどが過剰に存在する環境下では、有害な重金属を液胞へと輸送して貯蔵するという解毒コンパートメントとしての機能がある。分裂酵母にはHmt1タンパク質がカドミウムを液胞へと輸送する液胞膜局在トランスポーターである。出芽酵母において液胞膜タンパク質の液胞への輸送にはAP-3と呼ばれるアダプチン複合体が液胞膜への輸送に重要であることが最近報告された。そこで分裂酵母のゲノムを検索したところ、AP-3複合体の成分であるβ-アダプチンと高い相同性を示す一遺伝子(SPAC23H3.06)が存在することがわかった。本遺伝子破壊株は液胞内に局在するプロテアーゼなどは正常に液胞へと輸送されるが、液胞膜局在アルカリホスファターゼは液胞へと輸送されないことがわかり、分裂酵母においてもAP-3複合体が液胞膜タンパク質の輸送に重要な役割を果たしていることを明らかにした。次に本遺伝子破壊株で液胞膜局在Hmt1タンパクの局在を調べたところ、野生株と同様に正常に液胞膜に局在していることがわかり、分裂酵母にはAP-3複合体以外に液胞膜へタンパクを局在させるための未知の機構が存在することを初めて明らかにした。 酵母や植物の液胞は過剰なアミノ酸を液胞内にプールする貯蔵コンパートメントしての機能も果たしている。我々はL型アラニンをD体へと変換するアラニンラセマーゼ遺伝子が出芽酵母には無いが分裂酵母ゲノムに存在することを見いだした。本遺伝子産物は確かにアラニンラセマーゼ活性を有し、遺伝子破壊株は必須な遺伝子では無いが、D-アラニンを唯一窒素源とした場合、生育が非常に遅くなることがわかった。また本遺伝子を出芽酵母で発現させるとD-アラニンで生育出来るようになることがわかり、酵母におけるD-アミノ酸の役割について初めて明らかにした。現在D-アミノ酸代謝における液胞の機能についても解析を行っている。
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