研究概要 |
酵母の液胞形態を維持するためには液胞への膜輸送が正しく行われる必要がある。分裂酵母の液胞形態維持に関与する遺伝子の解析を行った。その結果、ホスファチジルイノシトール(Pl)3-キナーゼをコードする分裂酵母vps34遺伝子やPl 3-キナーゼサブユニットをコードするvps15、またPl 3,5-キナーゼをコードするste12遺伝子破壊株は異常に肥大する液胞形態を有することがわかった。さらに液胞形態に異常を示す変異株の検索を行ったところ、最近Pl3-Pと結合することが明らかにされたPXドメイン含有タンパク質をコードする2遺伝子、さらに出芽酵母の液胞形態の維持に必須であるVAC14遺伝子と相同性を示すSPBC25H2.03遺伝子も破壊すると異常に肥大した液胞へと変化することがわかった。これらの結果からPl3-P及びPl3,5-P2が液胞形態の維持に重要な機能を果たしていることを明らかにすることができた。一方、分裂酵母は水などの低浸透圧条件下にさらすと液胞が融合して天きな液胞へと変化することが報告された。出芽酵母の液胞の融合過程にはHOPS複合体と呼ばれる一群のタンパク質が関与していることがわかってきた。そこで分裂酵母ゲノムを検索して、出芽酵母のHOPS複合体をコードする遺伝子と相同性の高い遺伝子の破壊を行った。その結果、VPS39,VPS41両ホモログ遺伝子を破壊した株では低浸透圧下で液胞の融合が起こらないことがわかり、分裂酵母においてもHOPS複合体が液胞の融合過程に重要であることを明らかにした。2002年の2月に分裂酵母の全ゲノムが報告され、出芽酵母の液胞の融合に必須な機能を果たすVam3pと相同性の高いタンパク質が存在しないことがわかった。そこで分裂酵母の全SNARE遺伝子16個を染色体から単離し、これらの遺伝子破壊株の作成を試みた。その結果、出芽酵母のSNAREであるTlg2pと相同性の高い遺伝子であるSPAC823.05cを破壊した株は、低浸透圧下での液胞の融合が起こらないことがわかり、液胞の融合過程に関与していることが示唆された。
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