研究概要 |
研究代表者は、酵母液胞膜V-ATPaseの生合成と活性調節に必須な遺伝子を系統的に分離し、各サブユニットをコードする遺伝子を明らかにしてきた。その中に最終的にV-ATPaseの構成要素とならず、生合成過程における分子集合、活性発現に必須な遺伝子としてVNA14,VMA15遺伝子を発見した。本年度はこれら2種の遺伝子の構造と遺伝子産物の機能を,以下のとおり,明らかにした.1) VMA14遺伝子の全塩基配列を決定し,蛋白質データバンクの検索結果から,その産物(Vma14p)が新規蛋白質(分子量,146kDa)であることを示した.Vma14pは細胞質に存在する親水性蛋白質であることが判った.vma14欠失変異株において,V-ATPaseの活性は親株の25%程度であり,液胞の酸性化は認められなかった.さらに,この欠失株では,V-ATPaseの表在性サブユニットの液胞膜上への分子集合が不安定であることが示された.この所見は,Vma14pがV-ATPaseホロ酵素の分子集合と安定化に関与していることを示唆している. 2) VMA15の全塩基配列を決定し,本遺伝子が酵母CDC55遺伝子(その機能は生化学的に特定されていなかった)と同一であることを明らかにした.また,そのアミノ酸配列の解析から,VMA15/CDC55遺伝子産物は,ウサギ骨格筋由来の蛋白質脱リン酸化酵素2Aの調節サブユニットBと53%の同一性を持つことが判った.したがって,本遺伝子は,蛋白質の脱リン酸化に関与する調節蛋白質(分子量,60kDa)をコードしていると推定された.vma15欠失株のV-ATPase活性は親株の40%であり,液胞の酸性化も阻害されていた.これらの所見から,Vma15pは新規の調節蛋白質であり,V-ATPaseの分子集合と活性調節に対し,表在性サブユニットのリン酸化ー脱リン酸化が関与していることが強く示唆された(投稿論文執筆中).
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