研究概要 |
平成14年度は免疫抑制剤FK506の添加によるCa^<2+>感受性の増強機構を解明するための実験を継続し,以下の成果を修めた.vma3変異株を親株としてFK506超感受性変異株を分離し,vis1変異株(vma3-dependent, immunosuppressant-sensitive mutant)を同定した.このvma3依存性vis1変異株は0.1μg/ml FK506の添加により増殖を停止した.多コピー型genomic DNA libraryを用いて,VIS1遺伝子本体および多コピー抑圧遺伝子としてUBA1遺伝子(ユビキチン活性化酵素),UBP3遺伝子(脱ユビキチン化酵素)を同定した.Vis1pは214アミノ酸残基からなる新しい膜タンパク質であり,N-末端領域に膜貫通ドメインを持ち,c-末端領域にmyristylation siteを含むことが判明した.興味深いことに,vma3 ubp3二重変異株はvma3 vis1二重変異株と同様にFK506に対して超感受性の表現型を示した.Ubp3pは転写のsilencingにかかわるSir4pと相互作用し,また,分子シャペロンであるSsa1pおよびSsa2pの二重遺伝子破壊株の多コピー抑圧遺伝子産物として知られている.Vis1pの細胞内分布を決定するため,Vis1p-GFP融合タンパク質を作成し,蛍光顕微鏡および共焦点レーザー蛍光顕微鏡で精査した結果,液胞膜に局在することを突きとめた.この所見と従来の実験成績,および文献情報を総合して,Vis1pはUbp3がかかわる細胞質因子によって制御される新規タンパク質か,その因子と協調し液胞膜上で細胞増殖の制御にかかわる新規機能を発現していると結論した(2002年12月8-9日,合同班会議(京都市)発表).
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