研究概要 |
(1)高度な機能を持つ終脳の発生は,一時的にFGFシグナルに依存していることが知られている.しかし,マウスのfgf8ノックアウトによる表現型とゼブラフィッシュの突然変異体の表現型は明らかに異なっており,Fgfシグナルの詳細な機能に関してはまだ明らかになっていない.本研究では,終脳の発生におけるFGFシグナルの役割を調べるために,ゼブラフィッシュ初期胚におけるRas/MAPKカスケードの活性化領域を活性化型MAPKに対する特異抗体で調べた.さらに,種々の方法でRas/MAPKカスケードを抑制して,終脳での影響を詳細に調べた.今回の実験で以下の結果が得られ,Fgfの終脳形成における役割が明らかになった. 1.抗体染色により,体節期の中枢神経系では終脳先端部位,中脳・後脳境界でRas/MAPKカスケードが活性化していることが判明した. 2.阻害剤を用いて実験から,体節期の中枢神経系のRas/MAPKカスケードの活性化はFGFシグナルに依存していることが判明した. 3.Ras/MAPKカスケードが抑制された胚では,終脳の腹側の形成と中脳・後脳境界の形成が特異的に抑制されていた.一方,終脳背側の形成は正常であった. 4.終脳先端部位と中脳・後脳境界では,2種のfgf8とfgf3が発現していた. 5.アンチセンス技術を用いてfgf8とfgf3の発現抑制を行った結果,終脳腹側の形成にはfgf3とfgf8とが協調的に働いていること,また,中脳・後脳境界ではfgf8が主に機能していることが判明した. (2)昨年度より,神経管の背腹軸形成に異常を示すゼブラフィッシュミッドライン変異体,cameleonの原因遺伝子を染色体ウォーキング法で同定することを試みてきた.本年度の研究で,原因遺伝子がほぼ特定できた.現在,その遺伝子の機能を詳細に解析中である.
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