研究概要 |
中枢神経系の初期発生については個体発生のごく初期にシュペーマン・オーガナイザーとよばれる小さな中胚葉組織から分泌される神経誘導因子によってコントロールされていることが70年前から分かっていたが、その分子的実体はごく最近まで不明であった.申請者は分子生物学的手法と実験発生学的手法を組み合わせることによって、神経誘導因子Chordinを単離した。本研究ではさらにこれを一歩すすめ、多様な神経細胞を誘導するシグナルはシュペーマン・オーガナイザーに加えて、初期神経板の異なった領域間のコミュニケーションによって産み出されることが古典生物学的実験から分かっているので、その分子的実体を明らかにするための遺伝子スクリーニングと機能解析を行った。まず初期神経板で働く領域特異的分泌タンパクを系統的にシグナル・シーケンス・トラップ法によって用いて、アフリカツメガエルの系で神経管の背側に位置する非神経外胚葉に早期から発現する新規の分泌因子Tiarinを単離に成功した。H14年度はそのマウスおよびニワトリホモローグを単離したので、これを用いてこれらの種での機能について強制発現を用いて解析中である。また、研究の促進のため、ES細胞から神経前駆細胞を分化させ、これを用いた試験管内神経パターン形成のアッセイ系を確立した。この系では効率のよい神経分化が起こるのみならず、shh, BMPなどの位置情報因子に良く反応し、胚発生過程を試験管内で良く再現することがわかった。
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