嗅球の誘導の分子機構

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10220208
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 森 憲作 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60008563)
• 研究分担者: 長尾 伯 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50281647)
• キーワード: 嗅球 / 匂いマップ / フェロモンマップ / 感覚細胞 / 誘導

研究概要

(1)「主嗅球での匂いマップ」と「副嗅球でのフェロモンマップ」の解析
平成10年度に(1-a)OCAMを含めた3種類の細胞接着分子がそれぞれ嗅細胞軸索の異なったサブセットに発現していること、(1-b)それぞれの細胞接着分子を発現した嗅細胞軸索は、主嗅球の特定の領域(CAMドメイン)に投射していること、をみいだし、「主嗅球における匂いマップ」の概要を始めて明らかにした。本年度はこの仕事を発展させ、「匂い受容体マップ」の詳細を明らかした。さらに、本方法を副嗅覚系に適用し、「副嗅球におけるフェロモンマップ」の概要を明らかにした。すなわち、副嗅覚系ではOCAMおよび他の2種類の細胞接着分子が、特定のサブセットの鋤鼻神経軸索に発現しており、これらの軸索は副嗅球の特定のドメインに投射することをみいだした。これらの結果より、「主嗅球での匂いマップ」や「副嗅球でのフェロモンマップ」の誘導の分子メカニズム解析にむけての手がかりが得られた。
(2)副嗅覚系の感覚細胞の誘導メカニズムの解析
鋤鼻神経の切断により、鋤鼻感覚上皮の幹細胞から新規の鋤鼻感覚細胞を誘導し、各種の分子マーカーの発現の時間経過を調べることにより、鋤鼻感覚細胞の分化過程を調べた。この結果、幹細胞の分裂により生じた鋤鼻感覚細胞は特定の幼若な過程をへてサブセットの感覚細胞へ分化していくことがわかった。
(3)CAM欠損マウスの作成
「主嗅球での匂いマップ」や「副嗅球でのフェロモンマップ」の誘導にOCAMが関与していないかどうかを決定する為に、genetargeting法を用いてOCAM欠損マウスを作成した。現在、OCAM欠損マウスにおける「主嗅球での匂いマップ」や「副嗅球でのフェロモンマップ」の詳細を解析している。

研究成果

• [文献書誌] Mori, K. 他: "The olfactory bulb : coding and processing of odor molecule information"Science. 286. 711-715 (1999)
• [文献書誌] Yoshihara, Y. 他: "A genetic approach to visualization of multi-synaptic neuronal pathways using plant lectin transgene"Neuron. 22. 33-41 (1999)
• [文献書誌] Kashiwadani, H. 他: "Synchronized oscillatory discharges of mitral/tufted cells with different molecular receptive ranges in the rabbit olfactory bulb"J. Nuerophysiology. 82. 1786-1792 (1999)
• [文献書誌] Von Campenhausen, H. 他: "Convergence of segregated pheromonal patients from the accessory olfactory bulb to the cortex"Europian Journal of Nueroscience. (印刷中). (2000)
• [文献書誌] Mizuno, T. 他: "Neuronal adhesion molecule telencephalin induces rapid cell spreading of microglia"Brain Research. 849. 58-66 (1999)
• [文献書誌] Arii, N. 他: "Development of telencephalin in human cerebrum"Microscop. Res. Tech.. 46. 18-23 (1999)