嗅球の誘導の分子機構

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10220208
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 森 憲作 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60008563)
• 研究分担者: 長尾 伯 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50281647) ; 山口 正洋 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (60313102)
• キーワード: 嗅球 / 匂い地図 / 副嗅球 / フェロモン地図 / 細胞接着分子 / 内因性信号の光学測定

研究概要

(1)我々のグループは平成11年度に、マウスの嗅細胞軸索のサブセットに発現している3種の細胞接着分子の解析により、「主嗅球の糸球層における匂い受容体地図」の構造を明らかにした。平成12年度はラットの主嗅球での「匂い受容体地図」を決定するとともに、麻酔下のラットの嗅球の糸球層より多種多様な匂い刺激に応答する内因性信号を光学的に測定し「匂い応答機能地図」を見い出すことに成功した。「匂い受容体地図」と「匂い応答機能地図」を比較することにより、嗅球の「匂い地図」の機能構築の一部が判明した(内田ら、Nature Neurosci.,2000)。また、匂い地図内には「ゾーンと垂直方向の軸」と「腹側から背側へむかう軸」に沿って糸球が並んでいることがわかり、「嗅球匂い地図パターン形成」の手がかりが得られた。
(2)新生ニューロンを選択的に可視化する目的で、NestinのプロモーターのもとにGreen Fluorescent Protein(GFP)を発現するトランスジェニックマウスを作成した。このマウスを用いることにより、嗅神経切断後の新生嗅細胞や、Subventricular Zoneから嗅球へとMigrationする新生顆粒細胞を観察することが可能になった(山口ら、NeuroReport,2000)。
(3)マウス鋤鼻神経のサブセットに発現している数種類の細胞接着分子の解析により「副嗅球におけるフェロモン受容体地図」の中にドメイン構造があることを見い出した。

研究成果

• [文献書誌] von Campenhansen H.,& Mori,K.: "Convergence of segregated neuronal pathways from the accessory olfactory bulb to the cortex in the mouse"Eur.J.of Neuroscience. 12巻. 33-46 (2000)
• [文献書誌] Uchida,N., 他: "Color Maps in the mammalian olfactory bulb : Domain Organization and colorant structural features"Nature Neuroscience. 3巻. 1035-1043 (2000)
• [文献書誌] Nagao,H., 他: "Two mirror-image sensory maps with domain organization in the mouse main olfactory bulb"Neuro Report. 11巻. 3023-3027 (2000)
• [文献書誌] Yamaguchi,M., 他: "Visualization of neurogenesis in the central nervous system using nestin promotor-GFP transgenic mice"Neuro Report. 11巻. 1991-1996 (2000)
• [文献書誌] Mori,K., 他: "Zonal organization of the mammalian main and accessory olfactory systems"Phil.Trans.R.Soc.Lond.B.. 355巻. 1801-1802 (2000)
• [文献書誌] Yoshihara,Y.,Nagao,H,& Mori,K.: "Snifting out colors with multiple dendrites"Science. 29巻. 835-837 (2001)