研究課題
本年度はまず第一に留書の入力作業を行なった。京都国立博物館所蔵本および文人画研究所所蔵本については、両所から出版されている大型研究図録に早く翻刻されているので、これを利用することにした。つまり、すでに購入してあるOCRキャスナー(アグファおよびキャノン)を使って入力を進めたが、大変ヒット率が悪いため、これを手作業で修正した。これにきわめて多くの時間が費やされる結果となった。そこで、河野ゼミの実習作業として終了しない分については、これを外注に回すこととした。また、両者以外の探幽縮図については、河野ゼミにおいて解読を開始した。もっとも、その多くは河野自身によりすでに解読されているから、この作業も早晩終了するものと予想される。第二に、東京芸術大学が所蔵する常信縮図227巻の調査撮影を開始した。言うまでもなく、常信は探幽の甥に当たる木挽町狩野家の画家であるが、探幽亡きあと、狩野派を主導したすぐれた画技の持主であった。したがって、常信縮図は探幽縮図ときわめて密接な関係に結ばれており、探幽縮図の研究に際しこれを避けて通ることはできない。しかし、二百巻以上という膨大な量のため、今までほとんど精査されることなく打ちすぎてきた。そこで、これを一時東京大学へ管理替えを行ない、人文社会系研究科写真スタジオにおいて調査撮影を進めることとし、大和運送美術部に依頼し、二度に分けて搬入した上集中的に撮影を行なった。先年度購入したマミヤ67が、すぐれた威力を発揮した。来年度この留書を解読する予定にしている。第三に、文人画研究所に出張し、探幽縮図および関連資料の調査撮影を行なった。すでに述べたように、この研究所が所蔵する探幽縮図のうち、1985年ころまでに収集されたものは研究図録に収められているが、その後コレクションとなったものが少なくないからである。そのほか、谷文晁をはじめとする文人画家の手控え帳や粉本など、探幽縮図と関係浅からぬ資料を同時に調査し、撮影を行なった。このように、本研究の成果は着々と挙げられており、いよいよ最終年度の平成13年度は、これらを総合してCDロム化を目指すことになる。
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