現在の日本のボランティア論の限界をどのように超えていくことができるか。それを経験的調査検証した。ボランティア活動は、その被災地の復興へ至る諸段階により、視点や行動基準の移動が引き起こされる。つまり諸局面におけるボランティアの役割変化に応じてボランティア自身の主体変容をも引き起こす。こうした事象をボランティアの時系列的展開と呼ぶことにする。主体的変容を伴うボランティア活動のこうした展開は、理論的には「市民社会」による国家と「公共性」への協働と対抗という〈相補性〉のモメントを「公共圏」に構築することになる。こうした局面を、理論的に新たな多元的/対抗的「公共圏」創出問題と呼ぶ。そのためにまずボランティア論としては、社会的には、チャリティ段階のボランティア論から、社会再生としてのボランティアの理論化がはからわれなければならない。今回の調査では、諸状況変化におけるボランティア自身の自己変容を伴うボランティア活動の〈諸相と時系列的展開〉の単な進化論的把握を、一般ボランティアの役割〔一般ボランティアの自己変容過程とその限界を押さえた上で〕と専門職ボランティア〔専門職のボランティア化という自己変容過程そのものもテーマ化しつつ〕の役割の複合性の中で捉えた。すなわち、1)諸ボランティア状況変化への対応 A 諸状況変化における一般ボランティアの自己変容過程とその限界 B 諸状況変化における専門職がボランティア化していく際の、専門職の自己変容過程とその社会的条件 2)諸ボランティア組織の状況への対応とその限界 A 自然発生的ボランティア組織:case study l 鷹取救援基地 2 ピースボート/SVA 3 阪神地元NGO救援連絡会議(仮設住宅支援NGO連絡会)/被災地障害者センター B 専門職主導型ボランティア組織:case study 1 看護医療現地対策本部(兵庫県立看護大学)2 長田支援ネットワーク(阪神高齢者・障害者支援ネットワーク)3)専門職ボランティアの成立とその意義 A 〈制度・施設の諸ルールの中で遂行される専門職の業務〉の問題点 B〈制度化された専門職〉の理論的問題提起の仕方。
|