研究課題/領域番号 |
10301017
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉川 忠夫 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30026801)
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研究分担者 |
礪波 護 京都大学, 文学研究科, 教授 (10027534)
武田 時昌 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (50179644)
麥谷 邦夫 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (90114678)
曽布川 寛 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (90027558)
荒牧 典俊 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30027536)
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キーワード | 上清経 / 霊宝経 / 宗教意識 / 家訟 / 雲笈七籤 / 大阿弥陀経 / 六度集経 |
研究概要 |
平成10年度は、重点を道教において研究を進めた。具体的には、『真誥』『周氏冥通記』に代表される上清派道教経典群の分析を通じて、六朝社会とりわけ江南の寒門貴族層を中心とする地縁的、血縁的共同体の日常生活のなかでは、濃密な宗教的雰囲気のもとで多様な活動が展開されていたことがあらためて確認された。とりわけ注目されるのは、宗族中に発生するまざまな不幸の原因を冥界における死霊間の訴訟に起因すると考える塚訟の観念や、それに関連する罪の意識と贖非のための方法論などに顕著に反映された当時の人々の日常感覚に根ざした宗教的深層意識である。そこには、仏教の浸透によってもたらされた輪廻応報の観念や解脱救済の方法論とはまたことなった、中国人の宗教意識の原形ともいうべきものが見いだされる。また、体系的道教教理形成の過程における仏教教理の具体的影響の解明を進める中では、霊宝経典群に見られる因果応報説には、支謙訳の『大阿弥陀経』や康僧会訳の『六度集経』などの影響が存在することが具体的に検証されるとともに、輪廻転生を前堤とした仏教の自業自得の因果説とはことなる天人相関や祖先から子孫への応報説など、当時の中国人の意識の深層にひそむ固有の宗教観念が大きな影響を及ぼしていたことが明かになった。なお、これらの研究と並行して、『雲笈七籤』のテキスト・データベース作成作業を行い、おおむね作業を完了した。次年度早々にはネットワーク上で公開できる見込みである。
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