研究課題/領域番号 |
10301018
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
豊川 浩一 明治大学, 文学部, 教授 (30172208)
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研究分担者 |
細川 滋 香川大学, 経済学部, 教授 (50117587)
栗生沢 猛夫 北海道大学, 文学部, 教授 (40111190)
松木 栄三 静岡大学, 人文学部, 教授 (50008033)
吉田 俊則 富山大学, 人文学部, 教授 (40240296)
浅野 明 山形大学, 人文学部, 教授 (90133909)
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キーワード | キプチャク・カン国 / バスカク / ヨーシフ伝 / プスコフ市台帳 / 法定年限 / ピョートル大帝期の国家と教会 / バシキール人 |
研究概要 |
本年度は過去3ヵ年の研究成果に基づき、研究分担者が各自の担当した主題に関する研究について総括を行い、論文をまとめ一冊の研究成果報告集に編集した。その中で、栗生沢はキプチャク・カン国のルーシ支配の組織的構造をめぐる幾つかの問題を考察した。特に、13世紀中葉から史料に現れるバスカクが14世紀20年代から少なくなる点に注目する。その背景として、バスカクの地位に就く者がしばしば摩擦を引き起こしたこと以外に、カンの力が失われつつあった証しともとらえられる。田辺は16世紀中葉に書かれた作者不明の『ヨーシフ伝』の試訳を主な目的としている。この有名な修道士の半生が、その生い立ちからヴォロコラムスクに修道院を開基するまで述べられている。訳出されている部分からだけでも、彼をめぐる当時の人々の視点が生き生きと浮き彫りにされる。松木は16世紀プスコフ市台帳の紹介を主な目的にしつつも、都市ポサード民の共同体に関する情報について詳しく検討している。その台帳は、市民の生活を具体的にわれわれに示すだけてなく、ロシアの古い社団的集団のあり方を示唆する貴重な史料である。浅野は逃亡農民を捜索し連れ戻す際のいわゆる「法定年限」に注目し、それが17世紀前半の逃亡農民の捜索と裁判の実務においてどのような役割をはたしていたのかという点を論じている。吉田はピョートル大帝期へと向かう時代の国家と教会の関係を扱っている。17世紀半ばまで保たれていた両者の「共生関係」もピョートル出現前夜にはほころびが生じ始めていたが、他方では、そのことにより西ヨーロッパとの「対等」的な外交関係が成立したのだという。豊川はロシア国家の民族政策の基本的性格をバシキール人社会の併合から「同化」へと至る過程を通して探っている。
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