研究分担者 |
河野 明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00093237)
上野 健爾 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40011655)
西田 吾郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00027377)
森脇 淳 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70191062)
深谷 賢治 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30165261)
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研究概要 |
安定層のモデュライが正標数の体の上で擬射影的か,という問題は相変わらず難攻不落の問題である.これは応用範囲も広く重要な課題である.本年度の研究でこの問題の解決の道を探ったが,有限射による直像と層の初等変換を組み合わせると,射影空間上の安定層についてのBogomolov不等式の成立と,この問題の肯定的解決が殆ど同値であることが分かった.昨年度得た結果がここでは鍵になっている.Bogomolovの不等式については,算術的な場合についての一般化の定式化と証明に成功した.この過程では,算術的な場合におけるRiemann-Rochの確立が不可欠であったが,これはまた広い応用を持っているものと考えられる. 退化した多様体上での安定層の研究も進み,安定層を圏論的に把握することにより,放物安定層の概念と強い結びつきが発見された.複雑な代数多様体を単純な代数多様体の組み合わせに退化させることにより,多くの場合について安定層のモデュライの具体的研究に繋がるものと期待されている. 今年度の大きな成果は,代数曲面上の安定ベクトル束のモデュライについて,第2チャーン類をいくら大きくとっても,モデュライの次元が期待される次元よりも遙かに大きくなる偏極構造を取り得る代数曲面を構成したことであろう.これは,まずこのような局面であるための一般的な十分条件を確立して,更にこの条件を充たす曲面を組織的に構成したということ,第2チャーン類を大きくすればモデュライの構造はよくなるであろうという一般的な予想について,偏極構造が一般でないと正しくなく,この予想が相当微妙なものであることを明らかにしたことなどが高く評価される.
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