研究課題/領域番号 |
10304027
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
瀧川 仁 東京大学, 物性研究所, 教授 (10179575)
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研究分担者 |
高木 英典 東京大学, 物性研究所, 助教授 (40187935)
上田 〓 東京大学, 物性研究所, 教授 (20127054)
藤原 直樹 東京大学, 物性研究所, 助手 (60272530)
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キーワード | 量子スピン系 / スピンギャップ / 梯子格子 / スピン拡散 / 高温超伝導 |
研究概要 |
本年度は主として、1重項基底状態を持つ新しい擬2次元量子スピン系SrCU_2(BO_3)_2と、キャリアがドープされた梯子格子スピン系(Sr,La)_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>に対する研究が行われた。SrCu_2(BO_3)_2は反強磁性的な相互作用を持つスピンダイマーが、強いフラストレーションを伴って2次元的に配列したユニークな幾何学的構造を持つ。高磁場での磁化測定から、飽和磁化の分数に量子化された磁化プラトーが観測された。またホウ素核におけるスピン格子緩和率の対数的な磁場依存性から、スピン励起が拡散的な運動をすることが示され、更にスピン拡散係数が低温で著しく減少することが観測された。これは低温でダイマー1重項が形成されるにつれて、スピン励起が次第に局在化することを示しており、不純物を含まない均一な量子スピン系に対しては予想外の新しい現象といえる。この観点から量子磁化プラトーは、局在化したスピン励起がお互いの反発力によって超周期構造をとる結果として理解できる。一方(Sr,La)_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>は、1重項基底状態を持つ梯子格子スピン系に対するキャリア導入の効果を調べるのに最適な物質である。今年度はキャリアのないLa_6Ca_8CU_<24>O_<41>およびキャリア濃度の低いSr_<14>CU_<24>O_<41>に対して、酸素核と銅核のスピン格子緩和率を比較することにより、スピン励起の波数依存性を調べた。その結果、励起ギャップよりも低温でも、銅核における緩和率が酸素核に比べて著しく増大していることが見出され、反強磁性波数におけるスピン励起が強いダンピングを受けて、低エネルギーのスピンの揺らぎに寄与していることが示唆された。この他に、高温超伝導体YBa_2CU_4O_8の電気伝導が、磁場によって1次元的な振舞いから2次元的な振舞いに変化する現象や、擬1次元スピン系LiV_2O_6におけるV核のNMRの実験から、鎖端の付近で反強磁性モーメントが生じる現象などが観測された。
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