研究概要 |
本研究では,物質の基本量を低温・強磁場・高圧など複合極端条件下で測定できる装置を整備し,強相関f電子系化合物やd電子系化合物のバラエティに富む異常物性を電子レベルから理解することを目標とする。 本年は初年度として,1K以下の比熱測定装置を整備することに重点をおいた。まず,老朽化していた希釈冷凍機を更新し,準備していた1GPaまでの高圧セルを取り付け温度・圧力の構成を行った。 その間,もとの希釈冷凍機をもちいて,CeNiSnの磁場中低温比熱を測定した。その結果,これまで近藤半導体と言われていたこの物質の基底状態は,多体効果に支配された異常な金属状態であることを提唱した。 43Kで異常な複合相転移を示す物質UNiSnの電気抵抗に対する磁場-圧カ-温度依存性を丹念に調べ,相図を作成した。磁場-圧カ-温度3軸相図の各領域は,常磁性半導体相・強四重極子秩序相・強四重極子反強磁性相と暫定的に仮定し,それぞれの相の性質を引き続き調べている。 われわれの研究室で見いだした高温超伝導体銅酸化物と同じ結晶構造のルテニウム酸化物sr_2RuO_4の低温比熱精密測定から異方的超伝導に対応して,異常な残留電子比熱が観測され,他の測定結果と併せて,軌道依存型のp波超伝導体である可能性が高くなってきた。この物質の常伝導状態における輸送現象も異常であり,高温では2次元性の強い金属であり,150K以下の低温では異方性が強いながらも3次元金属と考えられる。圧力によって,全体的に3次元性が強くなる傾向が観測され,伝導機構の詳細な解析を行った。 その他にも,La_<2-x>Sr_xCuO_4の超伝導転移やUNiAlの低温磁気秩序に対する圧力効果の研究も進展し,部分的にはすでに論文公表している。
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