研究概要 |
平成11年度に実施した研究は,次の3項目に大別できる。1)極端条件下の測定系の整備,2)銅酸化物高温超伝導体に対する圧力効果,3)ウラン化合物の磁気秩序と四重極子秩序の制御。 1)極端条件下の測定系の整備 昨年度組み立てた比熱測定用高圧セルを希釈冷凍機に取り付け,温度・圧力の較正に次いで,測定のバックグランドになる圧力セルを含むアデンダーの熱容量を各圧力・各温度で測定した。今後,実際の試料の圧力下低温比熱の測定が可能になった。 2)銅酸化物高温超伝導体に対する圧力効果 銅酸化物La_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)の単結晶試料の超伝導転移温度Tcを,8GPaまでの圧力Pの関数として調べた。TcはPの静水圧からのずれに極めて敏感なことを見つけた。その異方的圧力効果の解析から,LSCOにおいては斜方晶歪み,すなわち,CuO_2面の波打ちは超伝導を抑制する。一方,CuO_2面間距離が増大するとTcが上昇することを見いだした。その結果を用いて,形状から生じる異方的圧力を利用することにより,LSCOでは最高のTc=51.6Kを達成した。また,Ndを添加したLSCOにおける1/8異常における結晶構造のゆがみと比較して,LSCO(x=1/8)でも低温の斜方晶歪み(Pccn)が生じていることを確認した。この歪みが,Tcの低下にも関連している。その他にも酸素欠陥とc軸電気伝導との関係を調べた。(発表論文6編) 3)ウラン化合物の磁気秩序と四重極子秩序の制御 昨年に引き続き,強磁場および超高圧をかけてUNiSnの43Kにおける相転移の変化を追跡し,反強磁性転移とフェロ四重極子秩序転移に分離した。その結果を圧力-磁場-温度に対する相図としてまとめた。UNiAlの磁性と伝導に対する圧力効果においても興味深い振る舞いを見いだした。(発表論文2編)
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