研究概要 |
平成12年度に実施した研究を大別すると,1)極端条件を用いた4fおよび5f電子系金属間化合物の電子状態の研究と2)極端条件を使ったd電子系酸化物における超伝導-磁性-格子の研究に分かれる。 1)極端条件を用いたf電子系金属間化合物の電子状態の研究 4f電子系(発表論文5編)本プロジェクトで整備した高圧低温比熱測定装置を用いて,YbInCu_4の比熱を150mK以下までの低温,100mKまでの圧力下で測定した。常圧でのYbInCu_4は,40Kで1次の価数転移を起こす。その転移に関わるエントロピーの変化から価数の変化分を見積もることができた。圧力印加により転移点は下がる。価数転移が消える量子臨界点近傍で,超伝導の出現が期待されたが,実験した圧力範囲ではまだ臨界点に到達することができず,したがって,超伝導もまだ見つかっていない。セルをさらに改良して,圧力を3GPa程度まで上げる必要がある。 異常な金属的基底状態を示すCeNiSnにCuを添加して見られる磁気秩序,YbB_<12>の参照物質となるLuB_<12>のフェルミ面の決定,さらに,CeTe_2,CeFe_2,CeSbにおける低温状態を実験的に明らかにした。 5f電子系(発表論文5編) 昨年度に引き続いて,UCu_2Snの四重極子秩序転移を磁場中弾性率測定で追跡し,温度-磁場相図を作成し,結晶場基底状態が2重項Γ_5であること示した。また,UNiAlの反強磁性に対する8GPaまでの圧力効果,URhGeの単結晶試料の15Tまでの磁場中低温比熱などの実験で,ウラン化合物の低温秩序構造の詳細を明らかにした。 2)極端条件を使ったd電子系酸化物における超伝導-磁性-格子の研究(発表論文2編) 8 GPaまでの異方的圧力で結晶格子の対称性を制御して,高温超伝導体La_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)の超伝導に対する結晶格子の役割を明らかにした。とりわけ,平坦な2次元CuO_2面が超伝導発現には重要な役割を演じ,それを乱すような変形に対して,超伝導は抑制されることを明らかにした。これらをまとめて,正方晶相のLSCOに対する相図をはじめて描くことに成功した。低ドープで見られる超伝導の消失は,正方晶相では,不連続的様相を示し,1次の超伝導-絶縁体転移を示唆するものであった。電子ドープ系の正方晶Nd_<2-x>Ce_xCuO_4における超伝導体-反強磁性絶縁体転移についての予備的知見も得られた。
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