研究概要 |
Ceモノプニクタイト,Yb_4As_3等の物質には,比較的不安定な4f電子軌道と希薄キャリアーとの相互作用に基づく,新しい物理的現象が存在すると考えられる.本研究の目的は,これらの新しい物理現象について,中性子回折およびX線線回折の手法により実験的に認識を深めることにある.本年度は以下の研究を行った.(1)Ceモノプニクタイトの高圧・高磁場下の磁気構造の中性子散乱による研究:昨年度に引き続き,サファイア・アンビル型高圧試料セルを用いて,CePについて中性子回折の実験を行った.その結果,この物質に関して1.7GPaから約3GPaまでの圧力下での磁気相図を確定することができた.また,これらの結果から,約3.4GPa以上の圧力下では,強磁性相のみとなることが推定され,その結果,約6GPaの圧力で強磁性が消滅するこの物質の特異な磁気相図の全容がほぼ明らかになった.(2)Yb_4As_3の磁場下の中性子散乱による磁気励起スペクトルの研究:Yb_4As_3に関して,フランスのILL研究所において,昨年度までの実験とは異なり磁場をこの物質のYb^<3+>1次元鎖の方向に加え磁気励起の測定を行った.この条件下では,Yb^<3+>1次元鎖は理想的なハイゼンベルグ系として振る舞うことを予想していたが,実験結果はこれに反する特徴を示し,この系にはさらに隠れた相互作用が存在することが明らかになった.(3)その他の新しい物理現象の研究:低温で4重極相互作用と磁気相互作用の競合する系として知られるCeB_6のLa希釈系Ce_<0.75>La_<0.25>B_6が約1.3K以下の低温で示す未知の秩序相(IV相)を解明するために,ILL研究所において粉末中性子回折の研究を行い,この結果,IV相の主要な秩序変数が磁気双極子でないことを明らかにした.また,同様に,約6K以下の低温で未知の秩序相を示す化合物PrF_4P_<12>につきX線回折並びに磁場下中性子回折の実験を行い,この相が4重極秩序相であることを明らかにした.
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