圧力で制御される有機ナロウギャップ半導体

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10304031
• 研究機関: 東邦大学
• 研究代表者: 梶田 晃示 東邦大学, 理学部, 教授 (50011739)
• 研究分担者: 田村 雅史 理化学研究所, 先任研究員 (00231423) ; 西尾 豊 東邦大学, 理学部, 助教授 (20172629)
• キーワード: 有機伝導体 / 電流磁気効果 / ホール効果 / ナロウギャップ半導体 / 圧力効果 / 一軸性圧縮

研究概要

1)θ-(BEDT-TTF)_2I_3は二次元金属である。この物質に靜水圧を印加すると5kbarあたりで、相転移をおこす。その高圧相について電気伝導担体の性質を調べた。その結果、温度低下に伴い担体濃度が急減、一方移動度が急上昇して、結果的に温度依存性の無い電気伝導性を示すという,高圧下でのα-(BEDT-TTF)_2I_3同じ性質を持つことを明らかにした。
2)α-(BEDT-TTF)_2I_3の中間圧力下(11-15kbar)での伝導担体の性質の温度依存性を詳しく調べた。中間圧力下では100Kあたりの温度で、一度抵抗上昇が起こった後、低温では再び温度依存性の無い電気抵抗が観測される。本研究の結果、a)中間温度における抵抗上昇は、主に担体濃度の減少によるものであること、b)低温度における温度依存のない電気抵抗は、担体濃度の温度変化と、移動度の温度変化が同時に起こるという上記の現象と同じであることが明らかになった。
3)一軸圧縮の技術を用いて、α-(BEDT-TTF)_2I_3の結晶をいろいろな方向に圧縮したときの電気伝導性の研究を行った、その結果a)結晶のある軸方向に圧縮すると、静水圧力下と基本的に同じ性質を持つナロウギャップ半導体になること、b)もう一つの軸方向に圧縮すると、大きなフェルミ面を持った金属になることが明らかになった。後者についてはホール効果を測定して、その温度依存性が、θ-(BEDT-TTF)_2I_3と酷似していることを見だした。
4)温度依存性のない電気伝導性を示すもう一つの例として、α-(BEDT-STF)_2I_3を取り上げて、伝導担体の性質の温度依存性を調べた。その結果、この物質でも、今まで述べてきた物質中の担体と同じ性質を持った担体が伝導性を支配していることを明らかにした。
結論として、温度低下による担体濃度の減少と、移動度の上昇の効果が相殺して温度依存性のない電気伝導性を示す一群の有機伝導体があり、この性質を持つ電子系は有機伝導体の基本的な状態の一つであることをしめした。

研究成果

• [文献書誌] 森初果: "Discontinuous Change of Metal-Insuulator Transstion of the Collaged θ-System : θ-(BEDT-TTF)_2(C_<sx>Rb_<l-x>)Z_n(SCN)_4"J.Phys.Sac.Jpn. 69. 1751-1756 (2000)
• [文献書誌] 西尾豊: "Thermal Study of (DMe-DCNQI)_2C_u System-Mechanism of Reentrant Metal-Insulator Transition"J.Phys.Sac.Jpn.. 69. 1414-1422 (2000)
• [文献書誌] 森初果: "Band width and Band Filling Control in Organic Conductors"Synthetic Metals. (印刷中).
• [文献書誌] 西尾豊: "anomalous Specific heat of (DMe-DCNAI-d_2[1,1;0]_<l-x>d_4[2,2;0]_x)_2C_u-System"Synthelic Metals. (印刷中).
• [文献書誌] 笠原茂: "Dynamical Behavior of Vortices in a Layard Superconductor k-(BEDT-TTF)_1 C_u(NCS)_2"Synthetic Metals. (印刷中).
• [文献書誌] 田嶋尚也: "Transport Properties of α-(BEDT-TTF)_2I_3 Under High Pressure-Ultra Narrow gap semiconductor"Synthetic Metals. (印刷中).
• [文献書誌] 田村雅史: "π-f Composite Metals"Synthetic Metals. (印刷中).