研究分担者 |
生形 貴男 静岡大学, 理学部, 助手 (00293598)
北村 晃寿 静岡大学, 理学部, 助手 (20260581)
千葉 聡 静岡大学, 理学部, 助手 (10236812)
茨木 雅子 静岡大学, 理学部, 助教授 (30109128)
北里 洋 静岡大学, 理学部, 教授 (00115445)
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研究概要 |
本年度は,有孔虫班・介形虫班・貝類班に分かれ,それぞれの分類群について硬組織の微細構造と石灰化に関する研究を進めた. 有孔虫班: 浅海棲の底生有孔虫を用いて,水温・塩分濃度・溶存酸素・光等の条件を制御した飼育実験を行った.様々な条件下で飼育された有孔虫について,電子顕微鏡像の画像処理から殻に見られる壁孔の平均面積と壁孔密度を求めたところ,低溶存酸素下では殻表面に占める壁孔面積の割合が大きくなることがわかった.また,異なる条件下で飼育された有孔虫の殻の化学組成を調べたところ,カルシウムに対するマグネシウムの比率が飼育水温と相関することがわかった.以上の結果と殻の成長速度との関係については現在検討中である. 介形虫班: 浅海に生息する介形虫を用いて,背甲の微細構造を電子顕微鏡で観察した.その結果,成体になる前の若い個体では殻構造は単純な均質構造からなるのに対して,成体では葉状構造・粒状構造・柱状構造・.有機質繊維構造などの様々な構造が見られ,それぞれの構造もさらに幾つかのタイプに分類されることがわかった.現在は,介形虫の餌から摂取されるカルシウムの挙動をカルシウムの同位体を用いて追跡しており,上記の殻構造と石灰化過程との関係を検討している. 貝類班: 二枚貝の殻断面および殻表面を顕微鏡下で観察し,殻体中の結晶伸長方向を調べた.その結果,殻の前縁および後縁では結晶は成長線と斜交し,斜交の程度も殻構造ごとに異なることがわかった.そこで,殼内の結晶成長を理論形態的に解析したところ,両者の斜交関係は結晶の異方成長と殻の付加成長速度の部位間の違いによって説明できることがわかった.また,成長阻害痕のある岩礁棲巻き貝を用いて,阻害痕付近の殼彫刻や殻構造の乱れと殻成長速度との関係について現在調べている最中である. なお,夏過ぎに電子顕微鏡が納品されたため,まだこれまでの研究成果を印刷公表するには至っていない.
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