生物硬組織の石灰化速度に関する研究:微細構造,形成環境,生物生態からのアプローチ

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10304040
• 研究機関: 静岡大学
• 研究代表者: 池谷 仙之 静岡大学, 理学部, 教授 (50022223)
• 研究分担者: 千葉 聡 東北大学, 理学部, 助教授 (10236812) ; 茨木 雅子 静岡大学, 理学部, 助教授 (30109128) ; 北里 洋 静岡大学, 理学部, 教授 (00115445) ; 生形 貴男 静岡大学, 理学部, 助手 (00293598) ; 北村 晃寿 静岡大学, 理学部, 助教授 (20260581)
• キーワード: 硬組織 / 飼育実験 / 石灰化 / 結晶成長 / 有孔虫類 / 介形虫類 / 貝類 / 殻微細構造

研究概要

本年度も、有孔虫班・介形虫班・貝類班ごとに、それぞれの分類群について硬組織の微細構造と石灰化に関する研究を進めた。
有孔虫班:浅海性底生有孔虫Ammonia beccariiについて、様々な水温と塩分と溶存酸素の下で飼育実験を行った。それぞれの条件下で成長した殻の酸素同位体比と微量元素含有比を測定した結果、酸素同位体比と飼育水温との間に明瞭な線形関係が認められた。また、微量元素のうち、マグネシウム含有比は、塩分にはほとんど影響されず、飼育水温と高い正の相関を示した。また、異なる溶存酸素下で成長したチャンバーの形態的特徴を比較したところ、貧酸素下のものほどより大きなポアを持つことがわかった。
介形虫班:浅海性介形虫類Xestoleberis hanaiiについて、各脱皮ステージごとに背甲の微量元素比と背甲内の網目状有機物の量を調べたところ、網目状有機物に富んだ個体発生初期において特にマグネシウム含有量が高いことがわかった。また、自然環境下で生育した成熟個体を定期的に採集し、背甲の微量元素比を測定した。この測定結果と前年度の飼育実験の結果から生育水温を推定したところ、採集地点における水温の季節変化を良く反映した値が得られた。
貝類班:浅海性及び淡水性の二枚貝類について、貝殻を構成する炭酸カルシウム結晶の形態と内部構造を解析した。その結果、特に淡水性のイシガイ類において、結晶内に明瞭な成長輪が発達することがわかった。そこで、成長輪の特徴的な縞状パターンを"鍵層"のように用いて、一つの殻の中の複数の場所で結晶の相対的な成長速度を比較した。加えて、それぞれ部位における殻全体の付加成長量も見積もった。その結果、殻全体の付加成長量に対する相対的な結晶の成長速度が、各結晶の形態やそれらのサイズ分布を規定していることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] Chiba, S.: "Ecological diversity and speciation in the land snails Mandarina from the Bonin Islands"Population Ecology. vol.44(in press).
• [文献書誌] Gooday, A.J., H.Kitazato, S.Hori, T.Toyofuku: "Monothalamous soft-shelled foraminifera at an abyssal site in the North Pacific : a preliminary report"Journal of Oceanography. vol.57,no.3. 377-384 (2001)
• [文献書誌] Ibaraki, M.: "Neogene planktonic foramnifera of the Caleta Herradura de Mejillones section in northern Chile : biostratigraphy and paleoceanographic implications"Micropaleontology. vol.47,no.3. 257-267 (2001)
• [文献書誌] Kitamura, A., O.Takano, H.Takada, H.Omote: "Late Pliocene-early Pleistocene paleoceanographic evolution of the Sea of Japan"Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology. vol.172. 81-98 (2001)
• [文献書誌] Ubukata, T.: "Geometric pattern and growth rate of prismatic shell structures in Bivalvia"Paleontological Research. vol.5,no.1. 249-270 (2001)
• [文献書誌] Ubukata, T.: "Nucleation and growth of crystals and formation of cellular pattern of prismatic shell microstructure in bivalve molluscs"Forma. vol.16,no.2. 141-154 (2001)
• [文献書誌] 池谷仙之・棚部一成編: "古生物の科学3,古生物の生態"朝倉書店. (2001)