研究課題/領域番号 |
10304052
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
大澤 映二 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (40001763)
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研究分担者 |
小澤 理樹 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30293757)
栗田 典之 豊橋技術科学大学, 工学部, 助手 (40283501)
後藤 仁志 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60282042)
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キーワード | ケンブリッジ構造データベース / 水素結合 / 遺伝子アルゴリズム / 分子力学法 / 静電ポテンシャル / Lippincott関数 |
研究概要 |
平成11年度は前年に引き続いて遺伝子アルゴリズムを用いて、ケンブリッジ構造データベースから切り出した炭化水素結晶構造を標準とする分子力学ポテンシャルパラメータの設定を行ったが、アルゴリズム自体の改良は進んだものの、収斂が悪く既知の分子間相互作用ポテンシャルの再検討を要すると考えられた。そこで、炭化水素分子間ファンデルワールス相互作用よりも良く調べられていて、方向性を持ってかなり強く解析し易い水素結合を取り上げて、やはりケンブリッジ構造データベースを利用して検討を行った。その結果、非常に興味深い結果が得られ、水素結合の本質に関わる新解釈を下すことが出来た。結果の概略は以下のようである。なお今回は対象をアルコールOH...O=Cカルボニル型の典型例に限った。 1.水素結合は結晶中においては、従来気相において信じられていたような直線型ではなく、約170度である。これはアルコールプロトンがカルボニル酸素の原子核方向に向かうのではなく、プロトン受容分子の静電ポテンシャル極小点に向かうからである。この極小点はカルボニル酸素の非結合電子の先端近くにある。 2.非結合電子軌道は120度の角度をなして対をなし、しかも近接位置にあるために、水素結合プロトンは常に2つの静電ポテンシャル極小点の影響を同時に受ける。このため、プロトンがカルボニルC=O軸の延長線上にある二股水素結合がエネルギー的に最も有利であるが、結晶中では他の近接非結合相互作用の影響を受けて理想的な直線型二股水素結合の出現頻度は多くない。 3.従って計算においては水素結合を常に二股型として扱うのが正しいが、そのまま定式化すると統計的な扱いにおいてゴーストデータを生じるので、カルバニル酸素非結合電子対の先端の中間位置に近い点を仮想的な静電ポテンシャル極小点と考えてパラメータを導いた。ポテンシャル関数は改良Lippincott型が最良であった。 これによって、分子力学計算スキームでは従来成功したことのない水素結合系の計算が可能となると見込まれる。平成12年度はこの点を確認する予定である。
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