ナノテクノロジー材料としての希土類ポリ酸を用いたメゾスコピック構造の構築と光物性

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10304055
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 山瀬 利博 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (80016576)
• 研究分担者: 成毛 治朗 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教授 (40237623) ; 尾関 智二 東京工業大学, 理学部, 助教授 (60214136) ; 竹中 章郎 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (80016146)
• キーワード: 希土類ポリ酸 / 希土類蛍光体 / Forster-Dexterエネルギー移動 / 分子デザイン / 構造化学 / 発光特性

研究概要

二種類の希土類金属イオンを含むヘテロポリ酸はその構造と発光特性を研究することにより希土類金属イオン間に働く双極子-双極子相互作用を調べる上での格好のモデルを提供し、希土類蛍光体の分子論的解釈や分子設計に重要である。本年度は構造的に異なる3種類のTb^<3+>/Eu^<3+>を含むヘテロポリ酸を合成し希土類金属イオン間のエネルギー移動がForster-Dexterタイプのものであることを実証した。
(1) Tb^<3+>/Eu^<3+>を含むヘテロポリ酸として、最近接のTb-Eu距離がそれぞれ5.05、3.76、6.17ÅのK_<15>H_3[Tb_<1.4>Eu_<1.6>(H_2O)_3(SbW_9O_<33>)(W_5O_<18>)_3]・25.5H_2O(1),Na_7H_<19>[Tb_<4.3>Eu_<1.7>O_2(OH)_6(H_2O)_6Al_2(Nb_6O_<19>)_5]・47H_2O(2),[NH_4]_<12>H_2[Tb_<3.1>Eu_<0.9>(H_2O)_<16>(MoO_4)(Mo_7O_<24>)_4]・13H_2O(3)を合成しこれらの固体の発光特性(励起、発光スペクとる、発光減衰の動力学)を調べた。
(2) Tb^<3+>→Eu^<3+>へのエネルギー移動は電気双極子-電気双極子相互作用によるForster-Dexterメカニズムで説明でき、Tb^<3+>の発光とEu^<3+>へのエネルギー移動の割合が等しくなるTb-Eu距離である臨界距離(R_0)、最近接間のエネルギー移動速度(k_<εΓ>)が求められた。
(3) 母体への励起により生成される0→M(M=W、Mo、Nb)lmct状態からのLn^<3+>へのエネルギー移動は0→Mlmct三重項状態から上記と同様Forster-Dexterメカニズムで起こると推定された。0→Mlmct三重項状態の^3T_<1u>→^1A_<1g>発光とEu^<3+>の^5D_1→^7F_j発光とを与える3を用いてTb^<3+>,Eu^<3+>へのエネルギー移動速度がエネルギー移動による^3T_<1u>→^1A_<1g>発光寿命の変化から4.3x10^6s^<-1>と見積もられた。

研究成果

• [文献書誌] T.Yamase: "Chemical Structure and Intramolecular Spin-Exchange Interaction of [(VO)_3(SbW_9O_<33>)_2]^<12->"Chem.Lett.. 56-57 (2001)
• [文献書誌] T.Yamase: "A Spherical Passium-capped Vanadium Methylphosphonate as Another E-Keggin Fragment [H_6KV_<12>O_<27>(VO_4)(PO_3CH_3)_3]^<5->"Chem.Lett.. 1350-1351 (2000)
• [文献書誌] T.Yamase: "Photochemical Self-assembly Reaction of β-[Mo_8O_<26>]^<4-> to Mixed-Valence Cluster [Mo_<37>O_<112>]^<26-> in Aqueous Media"Langmuir. 16. 9023-9030 (2000)
• [文献書誌] T.Yamase: "Crystal and Electronic Structures and Magnetic Susceptibility of the Photochemically Prepared Layered Vanadyl Phosphate,…"J.Chem.Soc.Dalton Trans.. 1143-1150 (2000)
• [文献書誌] H.Narulee: "Na_<10>(glycine)_2[H_2W_<12>O_<42>]・28H_2O"Acta Crystalloger.. C56. 177-178 (2000)
• [文献書誌] E.Ishikawa: "Photoreduction Processes of d-Dodecamolyldophosphate, d-[PMo_<12>O_<40>]^<3->, ^<31>P-NMR, Electrical Conductivity, and…"Bull.Chem.Soc.Jpn.. 73. 641-649 (2000)
• [文献書誌] 山瀬利博: "発光材料の展開"化学工業社. 80 (2000)
• [文献書誌] 山瀬利博: "ウイルス感染症との戦い-現状と21世紀への展望"医薬ジャーナル. 500 (2000)