溶媒クラスター構造と遷移状態における溶媒和の立体効果に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10304057
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 石黒 慎一 九州大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80111673)
• 研究分担者: 梅林 泰宏 九州大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90311836)
• キーワード: ラマン分光 / 非水素混合溶媒 / 溶媒和 / 立体効果 / 活性化パラメータ / 配位数 / 溶媒構造 / ラッピドスキャン

研究概要

イオンおよび錯体を含む溶媒和クラスターでは、複雑な分子構造をもつ溶媒分子が複数、集合化する結果、クラスター中に立体効果が発生する。ラマン分光測定装置をもちいて、二価遷移金属イオンに関してジメチルホルムアミド(DMF)-ジメチルアセトアミド混合溶媒和錯体の各溶媒成分の配位数数、散乱強度ならびにラマンシフトを決定した。混合溶媒中の亜鉛(II)の平均配位数は立体効果のためDMA分率の増加とともに低下することが見られたが、これは五配位錯体の生成ではなく、六配位と四配位の平衝であることが明らかになった。ラマンシフトは金属イオンの電荷密度に依存して変化することが見いだされた。N-メチルホルムアミド(NMF)-DMF混合溶媒中、CoCl_4^<2->錯体は、バルク溶媒クラスターの生成にともない、著しく生成が抑制されること、また固有電子スペクトルの溶媒組成依存性から、この錯体とNMFが塩化物イオンを介して水素結合したクラスターが生成することが結論された。ニッケル(II)イオンの溶媒交換は、DMF中、解離機構で進行するが、活性化状態で溶媒和の立体効果が働き、ビピリジン錯体の生成速度が溶媒交換速度より遅くなる。DMFにトリフルオロエタノール(TFE)を加えた混合溶媒中では、ビピリジンの生成速度は促進されることが見いだされた。さらに、生成速度の温度依存性から、活性化エンタルピー、活性化エントロピーが求められ、DMFリッチの組成領域とTFEリッチの領域では、反応メカニズムが異なることが見いだされた。反応系および生成系の基底状態エネルギーの溶媒組成依存性を移行および反応の熱力学的パラメータから見積もることで、逆反応速度定数および最終的に活性化状態エネルギーの溶媒組成依存性を求めることができる。これらの値と構造の関係を検討中である。

研究成果

• [文献書誌] S.Ishifuro: "Solvation structure and bromo complexation of neodymium(III) and yttrium(III) ions in solvent mixtures of N,N-dimethylformamide and N,N-dimethylacetamide"Phys,Chem,Chem,Phys,. 1. 2725-2732 (1999)
• [文献書誌] 梅林泰宏: "精密カロリメトリーによる疎水性クラスターの生成熱力学"表面. 37・10. 596-609 (1999)
• [文献書誌] M.Komiya: "Temary complexation of manganese(II) and cadmium(II) with 1,10-phenanthroline and halide or thiocyanato ions in N,N-dimethylformamide"J.Solution Chem.. 29. 165-182 (2000)
• [文献書誌] M,Shin: "Formation of copper(II9 thiocyanto and cadmium(II) iodo complexes in micelles of nonionic surfactants with varying poly(ethylene oxide) chain lengths"J,Colloid and Interface Sci,. 224(in press). (2000)