研究課題/領域番号 |
10304059
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 俊明 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80011675)
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研究分担者 |
近藤 寛 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (80302800)
横山 利彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20200917)
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キーワード | 磁気円偏光二色性(XMCD) / X線吸収分光(XAFS) / 磁性薄膜 / 磁気異方性 / 吸着分子 |
研究概要 |
まず、昨年度設計・製作したX線磁気円二色性(XMCD)測定用長高真空槽の立ち上げ・測定装置組み込みを行い、物構研放射光施設(KEK・PF)のビームライン11Aにおいて測定をはじめた。取り上げた系はCu(001)表面上にエピタキシャル成長させたCo、Ni薄膜にCOを吸着させたものである。Ni薄膜はそれ自身膜厚によって表面平行磁化→垂直磁化→平行磁化のように興味深い転移を示す。特に垂直磁化はその発現機構の解明と記録素子への応用のため注目が集まっているものである。Ni薄膜にCOを吸着させるとその垂直磁化の膜厚領域が拡大する。この磁気的性質をミクロスコピックに検討するため、薄膜の磁化のみならず吸着種の磁化もXMCD法により調べた。これまで吸着種のK吸収端XMCDは測定上の困難から先例がなかったが、本研究において世界ではじめてその測定に成功した。 面内に磁化したCo、Ni薄膜上のCOについては、O1s→CO2π^*遷移に対して弱い正のMXCD信号を得た。これはOの軌道磁気モーメントが負(Co、Niと反強磁性的)であることを示している。最近のCO/Coクラスター系の計算結果でもCOにしみだしたスピン磁気モーメントは負であるという結果が報告されており、本研究の結果と対応するものと考えられる。一方、面垂直に磁化したNi薄膜上のCOについては、O1s→CO2π^*遷移に対して強い負のXMCDを得た。これは逆にOの軌道磁気モーメントが正(Niと強磁性的)であることを示しており、面内示か薄膜上の結果と異なるものである。詳細は省略するが、これらの磁化の逆転は、スピンと軌道の磁化方向が同じであるとすれば金森則からも妥当であり、面外磁化の場合に軌道磁気モーメントが大きいこともCOが立って吸着していることを考えれば納得できる結果である。
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