研究概要 |
本研究の究極の目的は短波長光エレクトロニクスの基盤技術を確立することであり、そのために、可視短波長領域から紫外領域にわたるバンドギャップを持つII-VI族半導体を開発するとともにこの物質系をベースとしたナノスケール量子ドットの自己形成プロセス技術を確立する。対象とする物質系をZnO系、ZnSe/ZnS系、ZnCdSe/ZnSe系とした。これらの物質系を選んだ理由は、650-390nmの可視から紫外領域をカバーできること、ZnOの励起子束縛エネルギーは60meVと大きく、ZnSe/ZnS量子井戸での励起子束縛エネルギーも40meVと大きいこと、ZnCdSe/ZnSe量子井戸は青緑色レーザで開発が進められている系であること、による。さらに、この3つの物質系の量子構造の形成に関しては、我々のグループでは研究実績を積み重ねてきていることももう一つの理由であった。 本研究の成果は以下のようにまとめられる。(1)高品質のワイドギャップ半導体材料薄膜の作製技術を確立した。すなわち、既に分子線エピタキシによる高品質薄膜技術を確立していたZnS,ZnSe,ZnCdSe,系のII-VI族化合物半導体に加えて、酸素プラズマ援用分子線エピタキシ紫外領域の酸化物半導体ZnOの高品質薄膜作製技術、原子層エピタキシも取り入れたZnSe/ZnS,ZnCdSe/ZnSeヘテロ構造の形成技術、ZnOの極性制御技術、ZnO/ZnMgZnOヘテロ構造形成技術を確立した。この成果は、well-definedの半導体ナノ量子ドット作製には欠かせない技術である。(2)ZnO量子ピラミッド、ZnSe/ZnS,ZnCdSe/ZnSe量子ドット自己形成プロセスを確立した。特に、ZnO系については酸化物半導体では初めての量子ドット形成である。(3)量子ドット系に関して興味ある物性が得られた。特にZnCdSe/ZnSe系量子ドットに関する励起子局在の光学特性への影響の解明、ZnO/ZnMgO系量子構造に関して励起子機構による誘導放出の観測、ZnSe/ZnS量子ドットにおける初めてスペクトル拡散という量子ドット系に固有の現象を見いだした。以上述べた本研究の成果が短波長光エレクトロニクスの研究の進展に寄与することを願うものである。
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