研究概要 |
本研究は無機から有機まで,あるいは絶縁体から超伝導体までといった,従来ほとんど実現がされていない多種多様な物質を組み合わせたヘテロ構造の作製を可能とする手法を開発し、それが示す新しい物性の発現を探索する事を目指しているが、本年度は以下のような成果を得た。3次元共有結合物質基板上への2次元層状物質のエピタキシャル成長は,表面ダングリングボンドの終端という我々のアイデアの導入によって既に成功しているが,層状物質上に3次元物質を成長させることには未だ成功していなかった。水素終端したSi(111)基板上に層状物質であるInSe単結晶薄膜を成長し、その上に何種類かの3次元物質薄膜のエピタキシャル成長を試み、CdSとZnSeの薄膜のエピタキシャル成長に成功した。InSeと0.2%で格子整合するZnSeでは特に良好な薄膜が成長できることが実証され、中間層に入れる層状物質を選ぶことによって、格子不整合があるために良好なエピタキシャル成長に成功していない2種の3次元物質問のヘテロ成長を可能とする道が拓かれた。一方無機基板上に各種の有機物質を成長させる手法に関しては、基板を常温以下に冷却できる試料ホルダーを使用することにより、コロネンのように蒸気圧の高い有機物質のエピタキシャル膜を成長できることを明らかにした。また各種層状物質上に種々の厚みを有する銅フタロシアニン薄膜をエピタキシャル成長させ、光電子分光スペクトルを系統的に測定する事により、無機基板と有機エピタキシャル膜の界面電子構造に関する知見を得た。ヘテロ構造に固有の物性に関しては、Mnフタロシアニンのエピタキシャル膜の磁性について精密測定を行い、超薄膜に固有の磁気構造ができることを見出した。
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