有機ナノクリスタル、半導体超微粒子、高分子凝集体、ミセル等の微粒子は、サイズ、モルフォロジー、構造の違いによって一個一個の機能・物性に個性があり、微粒子の光ダイナミクスを正確に解明するためには単一微粒子を分光計側することが要求されているが、微粒子一個の蛍光や吸収は極めて微弱なため、従来の顕微分光手法では極限られた物質系を除いて多数の微粒子集団の平均情報しか解析されていない。本研究では、単一微粒子の内部、特に表面・界面層で起こる光物理・光化学現象を高感度・高精度に計測することを目的とし、微粒子を光共振器として利用した全く新しいダイナミック分光計測法を開発した。本年度は、昨年度試作したシステムを用いて、粒径や屈折率の既知な高分子ラテックスに色素をドープした試料のスペクトル測定を行ない共振ピークの波長や強度を解析して理論と比較し考察した。また、パルス光励起で微粒子内に過渡吸収を誘起するとともに、時間遅延させた高強度のパルスポンプ光により微粒子にレーザー発振を誘起し、吸収によって抑制された発振光強度から過渡吸収の時間変化を高感度・高時間分解能で追跡する手法を開発した。ポンプ光による微粒子界面層の屈折率変化についても、高分解スペクトル測定から高精度に解析した。さらに、レーザートラッピング法により微粒子と他の物質との相対的な位置を制御して、エネルギー移動などの物理化学的相互作用による種々の現象を高空間分解能で観測した。
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