平成11年度は当初の計画通り、従来不可能と考えられていた動作周波数10GHzで動作する金属基板SOI MOS集積回路の具現化を目的に、高性能LSI製造プロセス技術、及び高感度LSI性能評価技術を確定した。 従来1GHz程度が上限と考えられていた集積回路の動作周波数を一気に20GHz程度まで高速化することを可能とする理想的なデバイス構造として、気体分離配線・金属基板SOIデバイス構造及びそれを作製し得る材料プロセス技術を世界に先駆けて提案した。理想的なデバイス構造を具現化するためには、デバイス心臓部に最適な新材料を導入しつつ、製造プロセスによる揺らぎを徹底的に排除し、動作信頼性を劇的に向上させる必要がある。我々は、精密制御ウルトラクリーンプロセス技術を全面的に取り入れることにより、以下に示す新技術を完全に確立した。 (1)250℃の低温Siエピ成長技術、(2)低温プラズマ直接酸化技術、(3)低温プラズマ直接窒化技術、(4)イオン注入後の550℃活性化アニール技術、(5)プラズマ誘起ゲート酸化膜ダメージを大幅に低減しかつ低抵抗な体心立方構造タンタル薄膜を成膜することを可能とするXeプラズマゲート金属スパッタリング成膜技術、(6)Cu配線構造を可能とするTaNバリアメタル技術、(7)コンタクト抵抗値〜10^<-9>Ωcm^2を有するタンタルシリサイドコンタクト形成技術、(8)SOI MOSデバイス構造における電気的活性界面欠陥解析技術 以上の研究により、従来1GHzが上限とされてきた半導体集積回路の動作周波数を10GHzまで向上させることを可能とする基盤技術が完全に確立した。今後は、熱設計を含めた集積回路構造設計理論及び集積回路製造技術に関して、より一層の研究を進めることが必要である。
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