研究概要 |
本研究は,ZnSe系II-VI族、GaN系III-V族半導体低次元構造のにおけるミクロスコピックな構造とマクロスコピックな光物性との相関に関する詳細な評価を時間分解フォトルミネッセンス法により行い,励起子および励起子分子の輻射,非輻射再結合機構解明のための基礎光物性研究を遂行することを目的としている。 1.ピコ秒パルスレーザーと光学顕微鏡を組み合わせた時間・空間分解レーザー顕微分光法を開発し,ZnSe(110)基板上に自己成長させたCdSe量子ドットの発光ダイナミクスを詳細に測定した。その結果,発光スペクトルのみならず,発光寿命も励起場所によって著しく異なることがわかった。これは,閉じ込めの空間的な大きさが場所によって異なるために,それに対応して振動子強度の異なる光学遷移が観測されたものと理解できる。 2.量子井戸面内の電子と正孔の波動関数からなる励起子の振動子強度は、面に垂直に印可されるピエゾ電界や量子井戸面内の局在中心に捕まっている励起子の空間的な広がり(次元性)によって変化する。とくに輻射再結合寿命の温度依存性を解析することにより、励起子の局在性について議論することができる。すなわち、励起子の重心運動とフォトンの運動量保存則を考慮すると、輻射再結合寿命は、理想的な3次元(3D)状態(バルク)では温度の1.5乗に、2次元(2D)状態(量子井戸)では温度に、1次元(1D)(量子細線)状態では、温度の0.5乗に比例した依存性を示す。これに対して完全なゼロ次元(0D)状態(量子ドット)では、輻射再結合寿命は温度依存性を持たないことになる。平成11年度はこの手法を用いて種々のIn濃度のInGaN量子井戸発光素子における励起子の次元性を評価した。超高輝度(η_<ext>=20%)青色LEDの輻射再結合寿命は、約4〜5nsとほとんど温度依存性を持たず室温でもゼロ次元的な中心から発光していることが示された。
|