研究概要 |
本研究は,ZnSe系II-VI族、GaN系III-V族半導体低次元構造のにおけるミクロスコピックな構造とマクロスコピックな光物性との相関に関する詳細な評価を時間分解フォトルミネッセンス法により行い,励起子および励起子分子の輻射,非輻射再結合機構解明のための基礎光物性研究を遂行することを目的としている。特に、光励起によって生成された高密度キャリアがどの様な時間・空間ダイナミクスで緩和し光利得生成に関与するかを評価することは、超低しきい値LD実現のために必要な指針を得るため不可欠なアプローチである。本年度は、InGaN量子井戸系LDにおける高密度キャリアダイナミクスおよび光ゲインスペクトルの過渡特性を評価するために、白色光ポンプ-プローブ法による過渡吸収スペクトル測定を行った。再生増幅装置によるパルス光(波長:800nm,繰り返し:1kHz,パルス幅:150fs)をOPAによって370nmの紫外光に波長変換しこれをポンプ光として用いた。一方、再生増幅器からのパルス光の一部を重水に照射することにより白色パルスを生成し、これをプローブ光として用いた。評価に用いた試料は、活性層のIn組成がそれぞれ約10%,20%,30%の(a)In_<0.1>Ga_<0.9>N-LD(近紫外,390nm発振)、(b)In_<0.2>Ga_<0.8>N-LD(青紫色,420nm発振)および(c)In_<0.3>Ga_<0.7>N-LD(青色,440nm発振)である。(a)In_<0.1>Ga_<0.9>N-LDでは、ポンプ光(3.35eV)により生成したキャリアは,100fs以内の高速で井戸の底(E_<exlhh>)に緩和し光利得を生成すること、光利得が10000cm^<-1>まで飽和せず光励起エネルギー密度にほぼ比例して増加することが明らかにされた。さらに、(b)In_<0.2>Ga_<0.8>N-LDおよび(c)In_<0.3>Ga_<0.7>N-LDの試料では、井戸の底に緩和したキャリアーが深い局在準位に到達するまでに数psの時間が必要であることが分かった。しかも、(c)In_<0.3>Ga_<0.7>N-LDの試料では,光利得が2000cm^<-1>程度で飽和することが観測され、局在効果による状態密度の低下に起因しているものと考察された。
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