研究概要 |
本研究で用いられた薄膜媒体は、6つのスパッタ室から構成されたインライン製膜装置により作製された。各チャンバーの到達真空度は3Xl0^<-9>Torr以下である。基板に付着した不純物を取り除くのに、製膜前にrfスパッタでドライエッチングを施す。媒体の磁性膜組成CoCrPt、CoCrTaPt、CoCrPtBを用い、Cr、Pt、TaおよびB量を大きく変化させた。このような条件で作製された媒体の磁気特性、微細構造および記録再生特性を評価した結果、以下の知見を得た。 (1)CoCrPt媒体にBを添加すると粒間相互作用と結晶粒径がともに低減された。一方、CrをTaで置換することで、粒間相互作用は大幅に低減されるものの、粒径は粗大化された。記録再生特性結果から、CoCrPtにBを添加することで媒体ノイズが低減される。一方、CoCrTaPt媒体はCoCrPtB媒体に比較して媒体ノイズがより低い。これは、CoCrTaPt媒体の粒間相互作用が比較的小さいためである。このことから、さらなる低ノイズ媒体を実現するためにはCoCrPtへのTaとBの添加が有効であることが考えられる。 (2)熱的安定性の優れた媒体を実現するためには、熱ゆらぎ係数v_<act>K_u^<grain>/KTを85以上にする必要があることを明かにした。 (3)以上の結果から、媒体の静磁気特性をM_s=300emu/cm^3、角型比S=0.7、M_r=210emu/cm^3、t=15nm、v_<act>K_u^<grain>/KT=85、規格化保磁力H_c/H_k^<grain>=0.35と仮定し、GD_<act>の値を12nmとすると、低ノイズと熱耐性の優れた薄膜媒体を実現するためには、H_c,H_k^<grain>,K_u^<grain>のそれぞれの値は5kOe,14kOeと2.1×10^6erg/cm^3が必要であると考えられる。
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