研究課題/領域番号 |
10305031
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊福部 達 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (70002102)
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研究分担者 |
和田 親宗 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (50281837)
上見 憲弘 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (70280857)
鈴木 康夫 北海道大学, 医学部, 講師 (40221329)
松島 純一 北海道大学, 医学部附属病院, 講師 (60173829)
井野 秀一 北海道大学, 電子科学研究所, 講師 (70250511)
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キーワード | 人工現実感 / 人体影響 / HMD / 眼精疲労 / VR酔い / 自律神経系 / ペクション / 感覚統合 |
研究概要 |
本課題の目的は人工現実感技術で作り出される感覚刺激が人体にどのような影響を及ぼすのかを生体情報工学の観点から実験に基づき評価し、悪影響を与えないようにするための指針を示すところにある。本年度の成果は以下の通りである。 1. アーチスクリーンおよびHMDに2時間の映像を被験者に見せ、映像呈示の前後で視機能の変化を調べた。視機能としては、調節力、屈折力、眼球運動、眼圧、網膜観察について検査を試みた。その結果、調節力以外ではアーチスクリーン、HMDともに有意な変化は見られなかったが、HMDの場合、映像呈示終了後に近視状態と目による探索行動の劣化が見られた。ただし、これらは1時間後に正常値に戻った。 2. 移動する縞模様を見せて突然模様を停止させると自分が移動していた縞模様と逆方向に動いているように知覚される現象が生じる。これはベクションと呼ばれる現象であり、平衡機能障害やVR酔いの一因になることが推察されている。このベクションを客観的に計測することを試み、さらにその影響を軽減するような制御方法を探った。その結果、ベクション時に何らかの平衡機能刺激を与えると軽減されることを見出し、音刺激や触覚刺激でもベクションを減少させ得る可能性を示した。 3. 三次元の仮想映像をHMDを介して作業空間内で見せながら手作業をさせるときを想定し、そのときの視覚と手指の触覚との感覚統合がどこまで成立するかを調べた。その結果、呈示された映像と実物体である手指との間に奥行き知覚で大きな誤差が生じることを見出した。これは、HMDが立体視差のみを利用しているのに対し、手指を見るときには輻輳も寄与していることから両者の見方に違いがあることに起因する。それで、仮想物体に触れたときに触覚フィードバックを手指に与えることにより誤差の軽減を試みたところ、効果はそれほど大きくはなかったが作業の再現性が向上することを明らかにした。
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