研究概要 |
コンクリートおよびコンクリート構造のフレッシュ・若材齢・硬化・劣化の各段階の挙動解析技術を組み上げることにより,建設時から中・長期使用の全段階を連続したライフスパンとして捉え,コンクリート材料の品質と,構造力学挙動の両者を有機的に結びつけた総合評価手法を構築した。さらに,コンクリート構造物についてのトータルコスト評価システム構築のため,建設時の安全性評価,使用中に劣化したコンクリート構造物の補修・補強設計法の枠組みを提案した。施工段階では,施工法や管理体制からその安全性を定量評価する方法の枠組みを構築した。さらに,材料・配合の流動性への影響の評価モデル構築を行った。若材齢段階においては,細孔組織構造の形成,水和反応,水分保持および水分移動モデルを連成解析することで,任意の配合,使用材料,材齢,養生条件,環境条件に対し,自己収縮,乾燥収縮およびそれらが組み合わされた条件下での体積変化を適切に追跡できる枠組みを開発した。供用段階においては,種々の環境・気象作用を受けた際の鉄筋コンクリート構造内部で長期間に亘って進行する各種の物理化学現象に関して熱力学的観点から数量化を試み,相互依存性を考慮可能なシステムの構築を目指し,若材齢固定形成過程を追跡する熱力学連成解析システムを基盤とした,塩化物イオン移動,空隙水pHイオン平衡,二酸化炭素・酸素の平衡・移動および鋼材腐食現象を新たにモデル化し,数年〜数十年のスパンで進行する材料の劣化・変性現象,構造性能の低下を時系列で評価する手法の構築を試みた。さらに,若材齢コンクリートの組織形成過程と材料品質の変遷を逐次追跡する3次元有限要素解析法と,鉄筋コンクリート3次元有限要素構造解析法の双方向並行演算処理システムの開発を行った。さらに,性能照査型設計法の概念に基づき,既設コンクリート構造物の補強設計を行う方法論を提案した。
|