原子単位構造変化の動的直視による固体内反応の研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10305046
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 広島工業大学
• 研究代表者: 桐谷 道雄 広島工業大学, 工学部, 教授 (70033826)
• 研究分担者: 小松 正雄 広島工業大学, 工学部, 講師 (80309616)
• キーワード: 電子顕微鏡 / 格子欠陥 / 照射損傷 / 塑性変形 / 高速変形 / 転位構造 / 無秩序反応 / 延性破断

研究概要

本課題研究において導入した主たる研究機器「マルティスキャンCCDカメラ」は、既設の高分解能電子顕微鏡JEM2010に装着され、その機能を発揮しつつある.3ヵ年計画の初年度として行ってきた研究の現状は以下のとおりである.(a)高エネルギー粒子照射:本研究代表者が永年精魂を傾けてきた粒子照射(電子照射、イオン照射、中性子照射)を利用した欠陥反応の研究は、原子単位反応レベルでの解明へと進みつつある.FCC系とBCC系の金属での類似と基本的な差異が照射以外の現象をも含めて整理が可能となり、特にBCC金属においては欠陥構造発達過程における電子顕微鏡では観察できない微細な原子空孔集合体の役割が明らかになりつつある.また、照射下での点欠陥の無秩序反応の直接検知観察を手段とした各種点欠陥反応の研究は、転位ループや積層欠陥四面体での点欠陥の発生消滅の原子単位での機構の解明に近つきつつある.(b)延性材料の破断直前の極限状態における構造変化:転位機構によらない塑性変形を提案させるに至った全く予想外の点欠陥発生の発見は、FCC金属においては温度・歪速度等の関数として定量的なデータの構築へ、BCC金属においては電子顕微鏡では観察不可能な点欠陥の蓄積の検証へと進みつつある.(c)超高速塑性変形:世界最高レベルの超高速衝撃圧縮装置および超高速圧延機の設計・製作を完了し、バルク材料全体の歪速度を薄膜の破断直前のもの(>10^6/_s)に近づけることが可能となった.広範な種類の材料について高速塑性変形の実験を進めつつあり、通常の変形とは異なる変形組織の発見や、通常の変形速度では塑性加工できない材料が加工可能になるなど、次年度からの進展を期している.

研究成果

• [文献書誌] Y.Kizuka and M.Kiritani: "Defect structure near edge dislocation in neutron-irradiated Cu-0.3at.%Ge" Radiation Effects and Defects in Solids. Vol.143. 333-343 (1998)
• [文献書誌] M.Horiki.S.Arai and M.Kiritani: "Identification of the nature of small point defect clusters in neutron irradiated Fe-16Ni-15Cr by means of electron irradiation" Journal of Nuclear Materials. Vol.255. 165-173 (1998)
• [文献書誌] Y.Kizuka,Y.Satoh,S.Arai and M.Kiritani: "Identification of the nature of neutron-irradiation-induced defects in copper by means of electron irradiation" Radiation Effects and Defects in Solids. Vol.145. 237-251 (1998)
• [文献書誌] M.Kiritani and N.M.Ghoniem: "Damage production and accumulation" Journal of Nuclear Materials. (in press). 13 (1999)
• [文献書誌] M.Kiritani: "Design and experiments on production and reaction of point defects" Radiation Effects and Defects in Solids. (in press). 35 (1999)
• [文献書誌] 小松正雄、森博太郎: "超高圧電子顕微鏡用高温雰囲気試料筒の開発とその応用" 電子顕微鏡. Vol.33. 5-6 (1998)
• [文献書誌] M.Komatsu,T.Adachi,K.Yoshida and H.Mori: "In situ observation of growth process of CuO whiskers by environmental HVEM" Proc.International Conference on Electron Microscopy,Mexico. Vol.1. 281-282 (1998)
• [文献書誌] H.Mori,M.Komatsu,H.Okabayashi and D.E.Grosjean: "Study of electromigration in Al interconnects for LSI by electron microscopy" Proc.Internatinal Conference on Electron Microscopy,Mexico. Vol.1. 283-284 (1998)