研究概要 |
高エネルギー粒子照射による欠陥構造発達の機構の解明と、超高速塑性変形の変形機構の解明を目的として行った研究の概要を箇条書きする。(1)照射効果の研究は電子顕微鏡で観察可能な欠陥構造の動的挙動から、直接観察不可能な点欠陥の挙動の解明へと進んだ。(2)相違なる結晶系(fcc,bcc,およびhcp)の金属合金間の照射効果の類似と相違を、点欠陥集合体発生から分類系統化した。(3)通常では検知不可能な遷移過程・緩和過程を検出するため、超高圧電子顕微鏡による間歇電子照射法を開発し適用した。(4)結晶性金属の破断時の強変形が転位機構によらないことを立証し、全く新しい塑性変形機構を提案し報告した。(5)超高速塑性変形の実験技術の改良は、圧縮変形において歪み速度1x10^6/s、引っ張り変形において5x10^4/s、を可能とした。(6)多種の金属・合金(Al,Au,Cu,Fe,Ni,V,Zn,Cu_3Au,Ni_3Al,SUSその他)について高速塑性変形を系統的に実行し、導入された変形欠陥構造の観察解析を行った。(7)低速変形による転位のセル構造の導入とは全く対照的に、高速変形においては高密度の点欠陥集合体が発生し、均一に分布した転位が導入されることが一般則であることが確認された。(8)超高速塑性変形における低速変形の混入等を慎重に考慮し、高速塑性変形においては変形が転位機構によらず、材料全体にグライドエレメントの発生する新しい変形機構によることを提案するに至った。(9)この他、通常の変形速度では不可能な、超高速変形によるWやMoなどの塑性変形、NiTiやFeRh合金のアモルファス化、Fe-Ag多層膜の形成、等予備的な実験が進みつつあり、明最終年度にはその研究成果が期待されている。
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