超高圧電子顕微鏡による高エネルギー電子照射を利用した研究は、欠陥反応の動的直視を駆使する最も代表的な手法によるもので、(a)電子照射による欠陥構造発達への溶質原子の効果を系統的に検討し、(b)中性子照射した試料に高エネルギー電子照射を重畳させることによる欠陥のタイプの同定の手法の確立して代表的な材料への適用し、(c)転位の歪場の効果をとカスケード欠陥との関係を明らかにし、(d)電子照射による転位ループの成長の間に観察される点欠陥反応の確率的揺動現象の検出に成功し、(e)間歇電子照射法を開発し短緩和時間現象の測定を可能にした。高エネルギー中性子照射により導入される欠陥構造に関する研究としては、(f)純鉄における電子顕微鏡では観察不可能な微小点欠陥集合体の役割を解明し、(g)カスケード衝突で発生した点欠陥の行き先と微視的構造発達の関係を明らかにし、(h)欠陥構造発達に対する合金元素の効果を抽出し、(i)温度変動中性子照射により導入される欠陥構造の発達機構を解明した。結晶性金属の転位機構によらない塑性変形の実証は本研究における最も新しい重要な課題となった。(j)電子顕微鏡内直接観察により、強変形においても転位の活動が認められないことを確認し、(k)原子空孔集合体の発生消滅の動的・局所的観察および温度・歪速度依存から、点欠陥は分散した点欠陥として導入されることを明らかにし、(l)可塑性析出物を導入した試料の変形により局所歪の測定を行い、(m)転位ループ・ボイド・バブルなど二次欠陥を含んだ試料の変形による変形モードの検討を行った。これらの実験・解析結果を基として、(n)極高内部応力の発生によるグライドエレメントの活動を転位による変形機構に変わるものとして提案した。高速塑性変形の研究は、最高10^7/sの歪速度を達成し、(o)多くの金属・合金において10^5/s以上で変形により導入される欠陥構造が変化することを発見した。
|