研究課題
水酸アパタイト(HAp)の焼結体を分極誘起し、その表面上での結晶成長、培養細胞ならびに生体組織に及ぼす効果を調べた。直流電界によって分極処理した焼結体をSBF中に浸漬したところ、未分極の試料と較べて試料表面上に生成するHAp結晶の成長速度に差が見られた。分極処理した正極側の面上と負極側の面上とでも結晶成長に差が見られ、負極に帯電した面上では結晶の成長が著しく、逆に正極に帯電した面上では結晶成長が抑制された。これらホモ結晶成長に対し、酸・塩基性ミョウバン水溶液を用いて硫酸カリウムおよび石膏の結晶成長すなわちヘテロ結晶成長についても検討を行なった。結果、負極に帯電した面上では硫酸カリウム樹枝状結晶が多く観察され、逆に正極に帯電した面上では自形の結晶のみ観察された。骨芽様細胞株や神経細胞を用いて分極HAp上の細胞挙動を観察した結果、負極に帯電した面上では成長した生成結晶の上で細胞が活発に増殖したのに対し、正極側の面上では増殖細胞の数がそれほど多くないことが明らかになった。さらに分極HApの動物組織反応の予備実験を行い、試料の周囲界面組織の脱灰および非脱灰標本により観察した。その結果、埋入した試料に接した組織は分極面によって局部的に変化を認められ、未分極の試料周囲に比べ分極処理した試料周囲には新生骨が多く観察された。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)