耐熱材料の硫黄含有雰囲気における高温腐食に対する応力の影響を明らかにする目的で、前年度で完成した装置(サーボパルサー装置に電気炉と反応管を設置し、反応管に腐食性ガスを流しながら、応力負荷状態での高温腐食実験が可能)を用いて、腐食と応力の相互作用を調査した。 材料として、フェライト系ステンレス鋼(Fe-25Cr合金)を引っ張り試験片に加工したものを使用し、雰囲気として0.1%亜硫酸ガスを含む窒素ガスを採用した。温度は700℃、時間は最長10時間、応力の付加は一定加重で、0-35MPaの範囲で変化させた。 不活性ガスのAr雰囲気で加熱すると比較的薄く、緻密なクロム主体の酸化物が形成される。その後、N2-0.1%SO2雰囲気で加熱しながら、応力を付加すると、応力が約20MPa以下では、弾性変形のみで塑性変形(クリープ)は生じない。しかし、応力を増加させるとクリープ変形が開始し、応力の増加とともに変形速度は早くなる傾向が見られた。この変形の歪みが約1%を越えると酸化物スケールに亀裂が発生する。この亀裂部分が急速に腐食され、酸化物の他に硫化物の形成が観察された。亀裂は応力軸に垂直に発生し、試験片のほぼ中央部から発生し、周囲に伝播する。その亀裂間隔は歪み量に依存するが、亀裂の数はほぼ一定であることが明らかとなった。 現在、このクリープ変形と酸化物スケールの破壊の関係について、理論的な解明を進めている。今後は、水蒸気添加の影響について研究を進める予定である。
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