研究概要 |
高強度材料の腐食疲労に関し,実在環境に近い液薄膜下および乾湿繰り返し環境において再現・解析し,その評価法を確立することを目的とする。本年度は,(1)繰り返し応力および静的応力下でのき裂発生・進展に対応する電流の計測法の確立,(2)表面観察による不均一腐食とき裂の発生・成長の追跡,(3)き裂進展に及ぼす溶解・再不働態化速度の影響を明らかにする。 (1) 繰り返し応力および静的応力下でのき裂発生・進展に対応する電流の計測法の確立については,各種波形の繰り返し応力およびステップ状荷重変化による静的応力下で電流応答を計測し,き裂の発生・成長に対応する電流成分を抽出する。正弦波については,フーリエ積分法による高調波解析の手法を既に確立しており,台形波,三角波に対する電流応答をき裂先端の再不働態化過程とひずみの減少に伴う新生面の消滅速度を考慮したシミュレーションにより説明することができた。さらに,正弦波についてもシミュレションができたことから,今後高調波解析と併せてき裂先端の電流応答を解析する目処がつけられた。 (2) 表面観察による不均一腐食とき裂の発生・成長の追跡については,孔食および人工的な切り欠きから発生するき裂をレーザー顕微鏡により追跡することを試みた。現在までのところ,発生したき裂の確認と成長は測定できたが,装置の関係で追跡はできていない。 (3) き裂進展に及ぼす溶解・再不働態化速度の影響については,乾燥と湿潤時における溶液組成の急激な変化に伴って溶解・再不働態化の速度が大幅に変化することを,溶液濃度を変化させることでシミュレートできた。
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