研究課題/領域番号 |
10305053
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
水流 徹 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (20092562)
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研究分担者 |
沼田 博雄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (50156155)
西方 篤 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (90180588)
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キーワード | 腐食疲労 / 疲労き裂 / き裂進展 / 不働態 / 高調波解析 / レーザー顕微鏡 / 繰り返し応力 / 再不働態化 |
研究概要 |
本研究は、高強度材料の腐食疲労に関し、実在環境により近い溶液薄膜下および乾湿繰り返し環境において再現・解析し、その評価法を確立することを目的としている。本年度の研究では、(1)動的なひずみ条件におけるき裂の発生・成長に伴う電流応答の解析法の確立、(2)湿潤および乾湿繰り返し環境においてひずみに応答する電気化学的信号の計測と解析法の確立を目的とした。 (1) き裂の発生・成長に伴う電流応答については、ひずみに伴う新生面の形成・消滅過程をより詳細にシミュレーションすることによりき裂進展の微細メカニズムに迫る手法を確立した。すなわち、ひずみに伴って出現・消滅するき裂先端での新生面の面積は、ひずみの増加過程ではあるしきい値からひずみの極大までひずみに比例して増加し、ひずみの減少過程では異なるしきい値までひずみに比例して減少するという仮定のもとで最も適合するシミュレーションが達成できた。これによって、フィッティングのパラメータを合理的に変動させることとパラメータの物理的意味を検討することが可能となった。 (2) 液薄膜下での電気化学測定は、これまでの定電位分極が適用できないため腐食電位の測定となる。き裂発生前の腐食電位の変化は、ひずみのよる電極面積(電気二重層容量)の増減に伴う電位変化となる。一方、き裂発生後のひずみに伴う腐食電位の変化は、き裂の進展に伴うアノード電流によって極大ひずみの直前から電位が反転して減少しはじめ、ひずみ減少過程のあるしきい値で電気二重層容量の変化と再び一致することがわかった。これらの変化は予想されたものと一致したが、電位の変化は定性的であり、定量的な反応量を決められないことから、定量化の手法を検討する必要がある。さらに、乾湿繰り返しにおける液薄膜下での腐食は、乾燥直前と湿潤開始直後の腐食速度が極めて大きく、完全な乾燥状態と浸状態では腐食は停止またはきわめて遅くなる。実験室での加速試験ではより適切な乾湿繰り返しサイクル条件の選定が必要であることが示された。
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